2015/06/09

アカデミズム(aka ORG)

 大学の勉強会に参加してきた。教授が親切にも(医局員でもない)私の成長を気遣ってくださり、ご厚意で参加を許されてありがたいことだ。心の中は不思議と静謐で、やはりアカデミズムのなかにいると自分は落ち着くようだ。そして、そこで私がフェロー時代に同級生がNephrology Grand Roundで最初に(2011年9月)発表したobesity-related glumerulopathy(ORG)を思わせる症例を聞いた。

 糖尿病のない重度肥満に伴うネフローゼ症候群は1974年に初めてPalo AltoのVA病院から報告された(Ann Int Med 1974 81 440)。腎病理標本データベースを見直したコロンビア大学の報告(KI 2001 59 1498)によれば、その頻度は徐々に増えているそうだ。まあ肥満じたいが増えているから無理もない。

 病理像としてはFSGSないし糸球体肥大を呈する。原発性FSGSと比較すると、ORGは蛋白尿の程度が軽度でネフローゼ症候群にまでなることは少なく、分節性硬化や足突起のeffacementは少ない代わりに糸球体は肥大していたそうだ。またイヌに高脂肪食を食べさせて肥満にすると(JASN 2001 12 1211;こんな実験は今はもう出来ないかもしれないが)腎が肥大し、糸球体が肥大し(TGFβ1の発現が亢進し)、hyperfiltrationになり、intraglomerular hypertensionを反映してか(交感神経の刺激により)RAA系が亢進する。またadiponectin減少も病態に大きく関係しているようだ(NDT 2008 23 3767)。

 治療はRAA系阻害薬、睡眠時無呼吸の治療、bariatric surgery(減量のための胃切除;有効性を示したペンシルベニア大学の発表はClin Nephrol 2009 71 69)など。