AKIで腎臓内科がコンサルトを受けるのはたいてい患者さんのクレアチニンが上がって、主科がどうにかしようとしても駄目なときだ。そこで腎臓内科コンサルテーションの仕事はほとんど探偵に等しく、死亡推定時刻(腎傷害がおこったとき)から遡ってそのまえの状況を細かに調べる。しかし、米国腎臓内科フェローシップの二年間でこれを来る日も来る日も30件くらい受けていると、楽しいんだけど「こうなる前になんとかできないものか」と思う。腎機能を下げる薬を避けるとか、血圧を維持するとかいろいろできることはあるし、AKIが必発なら状況なら起こる前からコンサルトしてくれたらmake a differenceできるのにと思う。つまりこういうことだ(下図)。
しかし、早めに腎臓内科にコンサルテーションすると患者さんの予後は変わるの?という問いに答えはなかった。しかし今日、そういうスタディがあると知った(PLOS ONE 2013 8 e70482、NDT 2011 26 3202)。これらはICUでAKIになってから48時間以上待ってからコンサルトした患者さん達は死亡率が高かったというものだ。また、ICUに腎臓内科医(critical care nephrologist)がいると患者さんの予後が改善するというスタディもあるそうだ(Cardiorenal Med 2013 3 79)。特別な手技をするわけでもない腎臓内科医(透析だけならICU医だってできる)にコンサルテーションするだけでICU患者さんが助かるなんて、やっぱり腎臓内科医は格好いい。
そこから話は進んで、上の図のように全科において患者さんのAKI発症リスクを認識してもらいAKIを予防することが大切だ。私もコンサルテーションしていたときには主科に「これからはこういうことに気をつけてね」と予防啓発活動を行っていたが、前述の日本版AKIガイドラインには予防の章もあるそうだからそれが活用されればいいと思う。ただし、AKIのガイドラインを腎臓内科と集中治療科と循環器内科以外の先生が入手するだろうか…せっかくいいものが出来あがったら、大々的に宣伝して全科の先生方が持つようになったらいいと思う。でもそれが難しかったら、やはり地道にコンサルテーションを通して(コンサルテーションチームに他科志望のレジデントや学生をいれることもよい教育になる;私がフェローシップしたところも内科や麻酔科のレジデントがローテートしていた)やるしかない。