HHV-8といえばKaposi肉腫とCastleman病(正しくはmulticentric Castleman's disease;MCD)の原因だとは聴いていたがPOEMS症候群(polyneuropathy, organomegaly, endocrinopathy, M protein, skin changes)にも関与していることは知らなかった(Blood 1999 93 3643)。しかし考えてみればMCDのリンパ節病理像は典型的には形質細胞のポリクローナルな増殖をとる(AIDS Rev 2009 11 3)。稀にモノクローナルな形質芽球にtransformしてアグレッシブな形質芽球性のリンパ腫になることもあるらしい(Am J Surg Pathol 2007 31 1439)が、これはHHV-8だけでなくEBVにも感染したAIDS患者の症例報告だ。いずれにせよ形質細胞にtropismがあるHHV8がMタンパクがでる病態を起こしてもおかしくはない。
POEMS症候群のことは以前に腎臓のセミナーに行って初めて知った。POEMS症候群の診断基準に腎機能は含まれていないのであるが、Mタンパクもだすわけだし腎障害ももちろん起こす(Tohoku J Exp Med 2013 231 229)。フォローすると半数が腎障害を起こし15%が透析導入になったという報告もあるそうだ(NDT 1999 14 2370)。ただし、これらの機序はMタンパク質とは必ずしも直接は関係ないかもしれない。現在の仮説は、VEGFとIL-6による未熟な(CD34陽性)内皮系細胞の増殖、leakyな内皮細胞、内皮細胞ループの増加、糸球体基底膜の二重化(内皮下領域の増生)、メザンギウム領域の増生などが考えられているようだ。
POEMS症候群の治療であるが、MCDではRTXや抗IL-6モノクローナル抗体であるtociliximab(日本で開発されたお薬らしい;抗IL-2モノクローナル抗体で生体腎移植の導入に用いられるbasiliximabと名前が似ている)が試されているのに対し、POEMS症候群は骨髄腫に準じた骨髄移植、MP療法、thalidomide、lenalidomide、bortezomibなどが試され、産生元の形質細胞をたたかないことにはという感じみたいだ(Blood Reviews 2007 21 285)。調べてみると、抗IL-6も移植・化学療法後の再発例に対して学会発表レベルでは試されているようだ。