2015年6月6日土曜日

FGF23 and Klotho

 JSN/ASN joint science symposiumに参加してきた。まずKlothoについて黒尾先生が、つぎにFGF23についてDr. Myles S. Wolfがお話した。黒尾先生のお話では、Klotho欠損マウスが短命なのはgenotoxic stressのためではなくCPP(calciprotein particle)による炎症によるものだというお話が興味深かった。CPPとは、1nm以下のリン酸カルシウム塩の最小単位であるPosner's cluster;分子式Ca9(PO4)6がFetuin-Aと凝集してできた径100nm程度のかたまりで、血漿ではコロイドとして存在しているそうだ。あたかも水に溶けない脂肪がapoproteinと一緒になってlipoproteinとして存在しているように。

 CPPは内皮細胞にひっついてTLR、MCP-1(好中球のchemotactic agent)などを介してサイトカイン、炎症、動脈硬化などをきたす。ふつうはFGF23のco-receptorとしての膜型Klothoがあって、リン摂取時には骨からリン排泄亢進ホルモンであるFGF23が産生されて尿中にリンが排泄されてリンの恒常性が保たれるはずであるが、Klotho欠損マウスはその機構がはたらかないので高リン血症になる。しかしKlotho欠損因子にリン制限をかけるとリン値はあがらずCPPも減って寿命は延びる。さらに、Klothoには二種類あってもうひとつは可溶性Klothoだが、これが減ると線維化、Wntシグナリング経路の活性化、IGF-1シグナリング経路の活性化などがおこる(Science 2007 317 803、Am J Physiol Renal Physiol 2012 301 F1641←ああ、この雑誌の論文に触れるのひさしぶりだな…フェロー時代は読んでたけどな…)。

 じゃあ翻って、CKD患者さんではKlothoが減少するわけだが、マウスのようにリン制限をかけていればいいのかというと、話はそう単純ではない。というのはKlothoの減少の前から後かは不明だがとにかくCKDの進行とともに患者さんの身体の中ではFGF23値が指数的に増えていくからだ。これはリン排泄を一生懸命するための代償的な反応と考えることもできるが、残念ながら心筋肥大を起こし心血管系死を招くことは良く知られた事実だ(JCI 2011 121 4393←これは、私が米国腎臓内科フェローになって初めてJournal Clubで発表した論文なので感慨深いものがある…当時の様子もちゃんと書いてある)。

 あのあと抗FGF23モノクローナル抗体を試したがうまくいかなかったと風の便りに聞いていたが、今回その論文が紹介され(JCI 2012 122 2543)、この抗体で5/6腎摘ラットのFGF23をブロックすると、LVHは改善させるが著明な高リン血症と劇しい血管石灰化を起こしたそうだ。というわけでFGF23はFGF-2などと同様LVHを起こす意味で有害なホルモンだが、リン排泄とCPPコロイドの減少と言う意味で保護的なホルモンだ(というかホルモンなんて皆そうだ;出過ぎも出なさ過ぎもよくない)。しかしFGF23がLVHを起こす細胞内シグナリングがcalcineurinというのは興味深い;calcineurin inhibitorが効くかもしれないからだ(そういう質問がフロアからでていた)。