2013/01/25

Spironolactone and AKI

 ネフロン虚血によるATNは、基本的にさらなる虚血や腎害物質などによるダメージを避けて、クレアチニンのグラフが放物線を描くのを待つしかない。4、5と上がっていくクレアチニンに心配するprimary teamを「そのうち下がる」と支え、体液量、電解質など様々なアドバイスをするわけだが、「ATNの回復を早める治療があったら…」と毎日思う。
 とそこへ、spironolactoneが回復を早めるかもしれないという動物実験のことを知った(NDT 2012 0 1)。このメキシコのグループは、aldosteroneが強力な腎の血管収縮因子であることに着目し、以前ラットでspironolactone、あるいは副腎摘出が虚血によるAKIを予防することを示した(前者はAm J Physiol Renal Physiol 2007 293 F78、後者は同雑誌 2009 297 F932)。
 今回彼らは、腎虚血後3時間、6時間、9時間後に20mg/kg(ヒトにとってどらくらいか知らないが)のspironolactoneを経胃的に投与した。そして虚血後24時間後に各群の腎機能が非投与群に比べてどうか調べると、GFRは3時間、6時間後の投与群で守られた。AKIに関与するさまざまなマーカーも低かった。
 一般に術前のACE阻害剤は術中低血圧になるから避けられるし、spironolactoneも低血圧、高K血症など周術期に用いるにはトラブルが余りにも多そうだ。このスタディでは高K血症については調べられなかった。だが、たとえば20mg/kgのspironolactoneがヒトではごく少量に相当しトラブルが少なそうなら、臨床応用される日が来るかもしれない。