米国でおそらく一、二を争うほど多く処方されるPPI(OTC、処方箋がなくても買える)。この薬と間質性腎炎(AIN)の関係はよく知られているし、実際臨床でもPPIを止めてクレアチニンが下がるというのはよく経験する。しかし、それ以上にこのトピックを掘り下げる機会はなかった。こないだRenal Grand Roundでこれが取り上げられ、紹介された文献に触れた。
ひとつはオーストラリアの著者が書いたeditorial(Nephrology 2006 11 379)で、ニュージーランドの論文(Nephrology 2006 11 381)がPPIによるAINの罹患率が1:12000と発表したのを紹介していた。ほとんどが腎生検で確定診断された例だから、おそらく実際はもっと多いだろう。PPIのなかではomeprazole関連のAIN報告が最も多いが、これがomeprazole固有の問題なのか、先行薬でそれだけ報告が多いのかは不明だ。
もう一つはコロンビアのグループによるsystematic review(Aliment Pharmacol Ther 2007 26 545)。色々検索して、腎生検による確定診断例に限ってピックアップしたら1970-2006年のあいだに60例みつかった。それらを分析すると、非特異的な症状が多く(腎障害なので無理もないが、典型的とされる発熱や皮疹はまれだった)、約半数は利尿剤やACE阻害薬を併用していた。
投与からAIN発症までの期間は?2-52週間と幅があった(ただし2/3は12週間以内)。治療は?ステロイド?有効性のエビデンスは乏しい。薬を止めたらどうやってGERDをコントロールするの?H2ブロッカーを奨めるが、それでは症状を抑えられないこともある。
このジレンマを紹介したNEJMの論文"Bitter pills"が有名だ(NEJM 2010 363 1847)。PPIによるAINを疑って、PPIを止めてステロイドパルスしたら、クレアチニンは下がったが上部消化管出血になったという話だ。日々の臨床経験ではステロイドはまず使わない、薬を止めただけでクレアチニンは下がる。
なおPPIで腎臓内科がもう一つ知っておくべきことは低Mg血症だが、この話はまた。