2016/12/29

suPARと慢性腎不全(CKD)~NEJMの論文から~

今回この話題を書いたのは、個人的に興味があったのと次の投稿に書かせていただくアメリカのサイトで2016年の論文でインパクトが強かった腎臓の論文に関連するためである。
まず、suPARと慢性腎不全に関しては、NEJMの2015年の論文がいいと思う。

まず、そもそもsuPARに関してだが、suPARはsoluble urokinase-type plasminogen activator receptor の略であり、可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体である。

suPARに関しては様々な分野で取り上げられている(呼吸器領域循環器領域腫瘍領域)。腎臓の領域に関してはsuPARが微小変化群や膜性腎症と異なり、一部のFSGS患者で特異的に上昇している報告がある(CJASN November 07, 2014 vol. 9 no. 11 1903-1911)。

このNEJMの研究では、心カテーテル検査受検者の大規模血液標本登録であるEmory Cardiovascular Biobankから3683例の血中suPAR値を同定し、腎機能を評価(平均年齢 63歳、65%が男性、suPARの中央値が3040pg/ml)。
そのうち2292例で,線形混合モデルを用いてベースライン時のsuPAR値とeGFR,eGFRの変化,CKD発症(eGFR 60mL/分/1.73m2未満と定義)の関連をそれぞれ検討し,Cox回帰モデルにより人口統計学的因子と臨床変数を調整後の相関を解析している。

今回の結果では、ベースラインのsuPAR高値は追跡期間中のeGFR低下量と関連していた。suPARに関連したeGFRの低下は、ベースライン時のeGFR正常群で最も顕著であったというものである。
この論文の論評で、研究デザインの複雑さや交絡因子の除外がどうかなどのことはあり、今後の検討が必要な分野ではあるが、suPARが慢性腎不全の早期の診断マーカーになりうるかもしれないと提示した論文であり、腎臓内科としては知っておく必要性がある。

最近様々なマーカーの発見があり、混乱する部分も多いがしっかりと使い分けることは重要である。