2016/12/26

腎移植後の免疫抑制剤:ステロイドはいらない?

腎臓の移植は移植を受ける人にとっては、透析をしている人であれば透析での時間の制約から脱却することができるし、また多くの内服薬を必要としなくなる。(腎不全の人ではリンの薬や降圧薬などたくさん。。)

しかし、移植を受ける人は免疫抑制剤を飲み続けなければならない。一生である。
基本的にはカルシニューリン阻害薬(主にはタクロリムス)、ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト)、ステロイドが移植後の免疫抑制剤の維持療法で重要な薬となってくる。

移植直後は腎移植の拒絶反応を抑制するために抗体製剤を使用することが多く、バジリキシマブ(シムレクト)が日本では主に使われる。抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(サイモグロブリン)は日本では使えないが米国では中心的に使われている。

今回、LANCETにHARMONY trialというものが出た。
これは、2008年から2013年までの期間で615人に介入したRCTである。
介入群は3つに分けられ
A:シムレクト投与を行い、タクロリムス・セルセプト・ステロイドの維持療法を行う
B:シムレクト投与を行い、タクロリムス・セルセプト投与を行い、8日目にステロイドの投与を終了する。
C:サイモグロブリン投与を行い、タクロリムス・セルセプト投与を行い、8日目にステロイドの投与を終了する。

患者対象は18-75歳までで、免疫のリスクが低い症例(ABO適合症例など)である。
妊婦などは除外。

一次評価項目:12ヶ月での急性拒絶反応の有無
二次評価項目:グラフト生着率やグラフト機能、NODAT(移植後の糖尿病)の割合、収縮期・拡張期血圧、脂質、体重、移植後感染、悪性腫瘍の割合、傷の治りなどを評価

結論
移植後1年でサイモグロブリン投与はシムレクト投与に比べて有用性がすごく高いというものはない。
免疫のリスクが低い症例ではステロイドの早期の中止は特にやめない場合と異なり優位な差はない。逆に糖尿病のリスクを低下させた。


これは、シムレクトとサイモグロブリンを比較したRCTでは初めてのものである。

限界点としては、症例数がもう少し必要、腎病理の読む人の技量がバラバラ、タクロリムスの血中濃度にばらつきがある、プロトコール腎生検は強制的なものでないなどがある。

患者は内服薬を減らせれば、薬のコンプライアンスもよくなるはずである。
僕らがしっかりとそうできるように努力することが、大事である。