血液透析をしていると色々な合併症に遭遇する。多いのは血圧低下などである。
今回取り上げるけいれんは決して稀なものではない(Pediatr Nephrol. 1992;6(2):182.)。
血液透析患者ではけいれんを引き起こす様々な要因があり、血行動態の変動なども起きやすい。
今回は上記に関して少しまとめてみようと思う。
こんな場面であったらどうしよう?
・いつものように患者さんの透析回診を回っていた。Aさんに「今日の調子はどうですか?」と言ったところ、急にけいれんをしだしてしまった。
この人は新規のけいれんである。
もちろんけいれんを止めることが第一であるが、気道確保とどんなけいれんなのかを確認することはけいれんのfirst stepである。
ここで疑問が。。
血液透析患者と非血液透析患者では対応や評価は何か違うのか?
→これに関しては基本的には同じである。ただ、末期腎不全や血液透析患者では考えておかねばならないけいれんの原因はある。
・尿毒症性脳症・不均衡症候群・透析時血圧不安定・アルミニウム脳症・空気塞栓・低血糖・低カルシウム血症・低ナトリウム血症
などは考える必要がある。
透析患者では頭蓋内病変(出血や梗塞や硬膜外血腫)などは考える必要がある。
特に血液透析患者においては下記は頻度が高いのでチェックする必要がある。
・尿毒症性脳症:適切な透析開始後に数日から数週間で神経症状が改善する。
・不均衡症候群:BUNが高値な症例(170mg/dlや60mmol/L以上)や初回透析時にリスクが高い。
・エリスロポエチン刺激因子:EPO刺激因子による血圧上昇により高血圧性脳症を起こす(Int J Artif Organs. 1994;17(1):5.)。しかし、メタアナリシスではESA使用で増加はないとも言われている(J Am Soc Nephrol. 2004;15(12):3154.)。血圧問題ない人にESA投与でけいれんの発症が増えるエビデンスはない。
・薬剤や毒性:様々なものがけいれんを起こす。抗生物質(ペニシリン、セファロスポリン、エトラペネム)、テオフィリン、L-Dopa、リチウム、アシクロビル、高用量のヨード造影剤、カルバマゼピン、メトクロプラミドなどは起こす。そのほかにも多種の薬が起こしうる。
・透析認知症:アルミニウム脳症が少なくなってからは少ない。
透析患者のけいれんを見たときには、通常の鑑別は重要ではあるが特殊なものも考えるべきであり、それは腎臓内科医は知っておかなくてはならないと感じる。