2016/12/15

透析のシャント感染を考える。

血液透析患者さんに一定頻度で起こる可能性があるものがシャント感染である。
透析患者では、血液透析を行う際に観血的な処置を行い透析を行うため、一定頻度で感染症は生じる。
AVF(自己血管のシャント)では、3年間で70%以上が問題なく使えるし感染の割合も2-3%と言われている。
AVG(人工血管のシャント)では、3年間で50%以上が問題なく使え、感染や血栓で透析ができなくなることが多い。

上記の点から考えてもシャントはAVFの方が良さそうであるが、患者の中には血管の走行が変わっていたりして、自己血管のシャント増設ができない症例も多い。

まず、ここまでで知っておくことは患者さんのシャントが自分の血管なのか人工血管なのかを把握することは重要である。

・所見:発熱、発赤、皮膚バリアの消失、膿や稀だが出血などもある。
シャント感染で皮膚や血管が脆弱になり、出血で救急搬送された症例も経験した。

・感染菌:黄色ブドウ球菌が最多で、表皮ブドウ球菌が次に多い。

・リスク:偽性動脈瘤、血腫、皮膚の掻爬、薬物などをシャントから使用。

特にアクセスのタイプや局所性かなどで治療などは考える選択肢は異なってくる。

AVF,AVGにしても局所感染が最も多く
・AVFで発熱や菌血症を疑わない:抗生剤加療を2週間は少なくとも行う
・AVFで発熱や菌血症の併存が疑わせる:静脈投与の抗生剤を少なくとも4週間以上行い、シャント穿刺は同部位では行わない。2006年のKDOQIのガイドラインでは6週間の抗生剤投与を推奨。
・AVFで感染性血栓や敗血症性塞栓がある:自己血管シャント(感染部)を抜去する。

・AVGであれば常にグラフと抜去は考えないといけない。
静脈投与の抗生剤を用いて少なくとも2-4週間以上は治療するが、多くの場合は外科的な介入でグラフト抜去になる症例が多い。

もし、グラフト抜去後も発熱が持続していた場合には他の原因(骨髄炎や感染性心内膜炎など)や感染の波及などを考える必要がある。感染の波及は起こ
りやすく、また起こした場合には患者の予後は非常に悪いと言われる。

透析患者さんは様々な合併症に注意を払いながら我々も治療を行なっていく必要がある。

このシャント感染を書いていると私の恩師とExcitingな経験をした沖縄の冬を思いだす。