先ほどの症例をみてどうだっただろうか??
この症例にはいくつかの利尿薬の抵抗性を起こす機序がある。
まずは、利尿薬に関しては、作用部位に沿った薬がある。
・近位尿細管:炭酸脱水素酵素阻害薬(アセタゾラミド)
・ヘンレループ:ループ利尿薬(フロセミド、ブメタニド、トルセミドなど)
・遠位尿細管:サイアザイド利尿薬(Na-Cl阻害薬)
・遠位のカリウム保持性利尿薬は2つに分かれる
-ENac blocker:トリアムテレン
-ミネラルコルチコイド阻害薬:スピロノラクトン、エプレレノン
まず、PK(薬物動態学:Pharmacokinetics)、PD(薬力学:Pharmacodynamics)を把握することが大事である。
ちなみに
PK:薬物の吸収、分布、代謝、排泄にフォーカスを絞っている。
PD:薬物の作用部位における反応性を見ている。
ネフローゼ症候群や心不全や肝硬変では腸管浮腫などが生じ吸収障害が生じる。
ネフローゼ症候群では低アルブミン血症になることが多く、ループ利尿薬はアルブミンとの親和性が高いため、効果が減弱する。
CKD患者では、尿酸やアシドーシスや有機酸の影響で利尿薬の分泌が障害される。
心不全や肝硬変では腎血管の血流低下が生じる。
つまり、心不全、肝硬変、腎臓に利尿薬が届きにくいネフローゼ症候群などは、利尿薬の量を増やしてもダメで(届きにくいから。。)、投与回数を頻回にすることが重要である。
逆に慢性腎不全の症例では、届いてはいるからしっかりと分泌を阻害されないぐらいに一回量を使うことが重要である。
まずこの症例ではネフローゼであり、慢性腎不全でもあるからしっかりと1回量も使わなくてはいけないし、投与間隔も頻回にする必要があるだろう。
また、ネフローゼ症候群では尿細管管腔内のプラスミンが集合管のENacを活性化することが一つの説で言われている。これは、前子癇や抵抗性高血圧、心不全、糖尿病性腎症でも見られる。
このENac活性化によってNaの貯留などにつながる。
ここまでで、腎不全、ネフローゼですでに3つの薬物抵抗性の機序が浮かび上がっている。
今日はここまで。