2016/12/25

腎移植後に血液が濃くなる??(post transplant erythrocytosis)

腎の移植後に血液が濃縮される症例を見たことがあるだろうか?
Posttransplant erythrocytosis(PTE)という。2003年のreviewがあり、それを中心にまとめさせていただいた。

PTEとは腎移植後に持続的にヘモグロビンやヘマトクリットが上昇する病態
塞栓などなく6ヶ月以上持続する。

PTEの疫学
・腎移植のレシピエントに移植後8-15%の割合で生じる。多い報告だと22%と言われる。
・移植後8-24ヶ月後に生じる。
・グラフトの障害を一般的に来さない。
・PTEの報告は減少している(1993-1996までは19%で、1997-2005までは8%であった。)

PTEのリスクファクター
・男性
・拒絶を起こしていない
・腎機能が保持されている
・喫煙やDMなどもリスクをあげる報告がある。
・膵腎同時移植もリスクが上昇する。

ちなみに移植非関連性のerythrocytosisには腎細胞癌、乳癌、肝細胞癌、COPD、脳血管腫などがある。

PTEの原因
・様々なものが関連していると考えられており、現時点でははっきりとした原因は不明。

下記のホルモンが関連があると言われている。
・エリスロポエチン
・ヘマトポエチン成長因子(IGF1;インスリン成長因子、sSCF:血清幹細胞因子)
・RAS(レニンアンギオテンシン系)
・アンドロゲン

多くの研究で上記に対してACE-IやARBが腎移植後のエリスロポエチンの産生を抑制することがわかっている。機序ははっきりとわかってはいないが。

PTEの症状
PTE発症後治療なく、2年で1/4は症状が改善してくる。ただ、残りの人たちは何年も症状が持続し、腎機能障害も来たしてくる。

・60%の症例で症状があり、気分不良、頭痛、無気力、多血症症状、めまいなどが見られる。
・10-30%が血栓症状を呈する。
・1-2%が合併症で亡くなる場合がある。

PTEの治療
・Hb<18.5g/dL:ARBやACE-Iは治療の方法の一つ。どちらを選択するかに関しては患者や処方医の判断でいいとされている。ACE-IのがHb降下作用は強く、好まれる。

処方例として
ロサルタン 50mg/dayで開始。100mg/dayまで増量。
それでも改善なければ、エナラプリルに変更し、10-49mg/dayで加える。

・Hb>18.5g/dLは瀉血を行い、ACE-IやARBを導入する。

・ACE-IやARBが効かない時:テオフィリンは効果があると言われている。

腎移植後の血球増加を見たときに、PTEはしっかりと念頭に置いておかなくてはならない疾患である。
自分もしっかりと知識を積んで見たときに驚かないようにしていきたいと感じた。