2017/02/16

チキン?それともビーフ?

 病院の医局にいけばだいたい本棚があって、ふるい雑誌が並んでいる。背表紙が日に焼けていることもあるが、それを背にして話すとなんとなく権威的だ(テレビの取材などでみかける)。紙媒体はかさばるし、資源と輸送の手間の無駄だし、捨てるたびに気が咎めるが、何にでもいい面はある。きょう届いたJASN紙媒体にでた赤身肉とESRDリスクの論文は(JASN 2017 28 304)半年以上前にオンラインで発表されていたが、紙で遅れて来たので読み直すきっかけになった。

 45-74歳の中国系シンガポール成人コホートをフォローし、165項目の半定量的な食事質問票をもとにさまざまな蛋白源の摂取量別にESRDリスクを解析すると、赤身肉、鶏肉、魚介、卵、豆類などを調べると、赤身肉に有意に用量依存性の相関がみられた。赤身摂取量が多い群は野菜とくだものの摂取量がすくなく、運動量も少なかったが、それらを加味した多変数解析でも、もっとも多い群は少ない群よりESRDリスクが40%たかかった(CI 1.15-1.71)。

 Singapore Chinese Health Studyは生活習慣とさまざまな疾患の関係を調べるために1993年から1998年まで行われた。シンガポールは都市国家で、対象の中国系は遺伝的社会的に均質性が高く、疫学研究が行いやすかったのかもしれない。質問票の正確さについて検証が不十分などの批判的吟味は必要だが、結果には一定の説得力がある。またたんぱく摂取量があまり多くない日本で、量を減らすより質をかえるほうが有効ならば治療改善の余地があるから、スタディする価値があると思う。つづく。