2017/02/28

忘れずにいること

 「ダメ。ゼッタイ。」という、慎重投与ではなく禁忌なお薬は、腎機能が低下した方、なかでも透析患者さんにはけっこうある。しかし、絶対駄目なのに処方できてしまうのが問題だと常々おもっている。処方できない仕組みが広まらないうちは、透析医・腎臓内科医がゲートキーパーになって、他科を受診した時にも彼らに確認してから処方してもらうようにするのが最善策なのかもしれない(Aust Prescr 2016 39 21)。

 といっても腎毒性のある薬や腎機能低下時に蓄積して重篤な副作用を起こす薬は星の数ほどあり、日本腎臓病薬物療法学会がだす「腎機能低下時に最も注意が必要な薬剤投与量一覧」に取り上げられただけで206あり、さらにそのなかで添付文書上「投与禁忌」の記載があるものが60ある。

リザトリプタン
オーラノフィン
ブシラミン
ペニシラミン
メトトレキサート
コルヒチン
パリペリドン
デュロキセチン
炭酸リチウム
アマンタジン
プラミペキソール長時間作用型
ピラセタム
アセタゾラミド
タダラフィル
ジソピラミドリン酸塩徐放型
シベンゾリン
ソタロール
フェノフィブラート
べザフィブラート
レボセチリジン
リン酸二水素Na水和物+無水和物配合錠
アセトヘキサミド
グリクロピラミド
グリベンクラミド
グリメピリド
クロルプロパミド
ナテグリニド
ブホルミン
メトホルミン
トレラグリプチン
エキセナチド
ピオグリタゾン+メトホルミン
ピオグリタゾン+アログリプチン
エチドロン
リセドロン
エノキサパリン
フォンダパリヌクス
ダビガトラン
アピキサバン
エドキサバン
ダナパロイド
リバロキサバン
バトロキソビン
エトレチナート
HES
塩化カリウム(スローケー®)
ホスカルネット
ソホスブビル
ソホスブビル+レディパスビル
リバビリン
アトコバン+プログアニ
テガフール・ギメラシル・オテラシル
フルダラビン
ブレオマイシン
ペプロマイシン
シスプラチン
タダラフィル
デスモプレシンOD錠
造影剤
ガドリニウム造影剤

 新しいお薬から古いものまでさまざまだが、知らないものもあった。たとえばアマンタジンなど、2006年禁忌になったころはけいれん、意識障害など副作用の事例が多く「1錠だけでも大変なことになる」と有名だったそうだ。しかしあまりにも有名で事例が減ったためか、パーキンソニズムやインフルエンザに対してほかの薬が使われるようになったためか、触れる機会がなかった。こうしてリストに載っていると注意喚起されるのでありがたい。
 
 ほかに余りに有名であっても載せたほうがいいとおもうのは、アルミニウム製剤だ。昔の透析液にアルミニウムが含まれていたこと、アルミニウム含有のリン吸着剤があったこと、クエン酸とアルミニウムの組み合わせはとくに吸収を高める(アルミニウムの水溶性が増し、腸管上皮のタイトジャンクションが開く;KI 1989 36 949)ことなども、忘れられてゆく。

 いまでも処方されうる薬だから、こうした古い知識を忘れないようにする機会も大事だと思う。