2012/11/30

Urinary plasmin

 ネフローゼで浮腫になるのは低アルブミン血症で膠質浸透圧が下がるからと思っていたが、それと別に腎臓におけるNa貯留が機序として分かったのはつい数年前のことだ(JASN 2009 20 299)。欧州のグループによるこの論文は、ネフローゼで尿中に漏れるplasminがENaCのγサブユニットについたinhibitory peptideをcleaveしてENaCを活性化することを示した。

 今月のJASNでは、やはり欧州の尿細管とイオン輸送のボスであるBindels先生のグループが、plasminが今度は遠位尿細管のCaチャネルTRPV5を抑制することを示した論文が出た(JASN 2012 23 1824)。研究によればplasminがPAR-1を介した細胞内シグナリング経路を活性化し、TRPV5のCalmodulin結合サイトのアミノ酸残基(144セリン)をリン酸化して、それによりチャネルの孔が閉じる。

 TRPV5-transfected HEK293 cellを使ったりパッチクランプを使ったりして美しい論文だが、ネフローゼで尿Ca排泄が増えるという話はあまり聴かない(著者によれば家族性ネフローゼでnephrocalcinosisの報告があるらしい)。おそらくENaCの次はTRPV5という具合に調べてみたのだろうが、これが糸口になって新たな病態機序が分かれば面白い。