2012/11/27

塩素イオンの害

 ICU分野は治療の何から何まで入念に有効性が検証されており、生理食塩水もそのひとつだ。Volume overload、高Cl代謝性アシドーシスを起こすのみならず急性腎不全を起こしているかもしれないと考えられている(レビューはCrit Care 2010 14 226)。その機序として、vasoconstrictionが考えられている(動物ではJCI 1983 71 726、人間ではAnn Surg 2012 256 18)。

 それで、ICUによっては低Clな輸液、LR、Hartman、Baxter社のPlasma-Lyte®などを用いる。先月JAMAに高Cl輸液群と低Cl輸液群でICUにおけるAKIの違いを調べた論文がでた(JAMA 2012 308 1566)。ICUに「高Cl輸液はICU指導医の許可なしに輸液できない」というシバリを掛ける前と後で比較したもので、学会でも紹介されたらしい。

 結果は、シバリを掛けたほうがAKIが少なかった。Volumeは大きなconfounding factorだろうが、著者はCl負荷がAKIのリスク因子と言いたいようだ。それにしてもオーストラリアはICUと輸液についてのスタディをバンバンだす。SAFE(NEJM 2004 350 2247)もそうだし、今月でたHESと生理食塩水を比べたの(NEJM 2012 367 1901)もそう。実際に病院ではどんな輸液をしているのだろう。



 [2017年7月追加]0.9%食塩水についてのディベート論文について紹介した投稿、0.9%食塩水とPlasmaLyte®を比較したSPLITトライアルを紹介した投稿も参考になれば幸いです。