2012/11/03

MN

 膜性腎症のセッションに参加した。まず英国のUK GN DNA Bank(とフランスとオランダの小規模コホート)のGWAS(genome-wide associated studies)を行った先生が、染色体の二番と六番にSNPを見つけて、前者はPLA2R、後者はHLA-DQA1だったという話をした。

 いまや抗PLA2R抗体の有無でidiopathic MNとsecondary MNをだいたい分けられると考えられ、陽性なら二次性の精査は不要(もしかしたら腎生検すら不要かもしれない)という。また抗体価が蛋白尿に相関することや、RTX投与後の抗体陰転化は治療の反応を予測することもわかった(JASN 2011 22 1543)。

 そこから話は治療に移り、英国で初めてMNのRCTらしいスタディを行った(Lancetに近々発表される予定)先生が今年改訂されたKDIGOガイドライン(KI supplement 2012, chapter 7)と自らのスタディ結果をレビューした。ガイドラインは①腎機能が悪化し始めたら治療せよ(すでにCr 3.5mg/dl以上なら手遅れ)、②Ponticelliを選択せよ(alkylating agentにはcyclophosphamideを用いよ)、③CNIは第二選択にせよ、④MMFは使うな、だ。RTXのコメントはないようだ。

 そして彼のスタディは10年かけてenrollした108例を①Ponticelli(chlorambucilを用いるレジメン)、②cyclosporine、③supportive care(ACEIなど)に分けて、腎機能悪化(20%以上)と蛋白尿をアウトカムに前向きに追跡したものだ。結果は、①のほうが②より優れ、②は③とほとんど変わらなかった。とはいえ①でも腎機能が保たれたのは40%に過ぎなかったし、副作用は①も②も多かった。

 [2013年5月追加]最終段落のスタディが、Lancetに載った(Lancet 2013 381 2)。

 [2016年7月追加]ふつふつしていた原発性膜性腎症に対するRTXの有効性(散発的な報告をまとめたシステマティック・レビューはCJASN 2009 4 734)だが、初のRCTであるGEMRITUXの長期データがでた(doi: 10.1681/ASN.2016040449)。

 パリの施設でeGFR 60-70ml/min/1.73m2、たんぱく尿7000mg/gCr、Alb 2.0g/dl程度の患者さんを非免疫抑制抗たんぱく尿治療(non-immunosuppressive anti-proteinuric treatment、NIAT)群とNIAT+RTX群にわけて、6ヶ月後のたんぱく尿の完全寛解は前者で21%、後者で35%だったが数が少なく有意さが出なかった。ただし抗PLA2R抗体価(約8割で陽性)はNIAT+RTX群で著明に低下し消失した。

 抗PLA2R抗体を消してもたんぱく尿がなおらないのは、困ったことだ。RTXを375mg/m2BSA on Day 1 and Day 8の二回しか打っていないのが少ないのか(北米のコントロールされていないスタディではweekly RTX 375mg/m2BSA x 4 + every 6 monthsで、2年のフォローアップで11g/gCrのたんぱく尿が2.4に、70ml/min/1.73m2のeGFRが80に回復した;CJASN 2010 5 2188)。また、NIAT群の寛解率が高すぎる気もする。