腎疾患は腎そのものに原因がある場合もあるが、多くの場合腎外の因子が腎にダメージを与えて起こる。では、腎臓を移植しても同じプロセスがダメージを起こすのでは?最も顕著な例はFSGSだろう。今年Northwestern大学が報告した有名なケースがある(NEJM 2012 366 1648)。
原発性のFSGS患者さんに健康な生体腎を移植したら、二日目には>10g/dの蛋白尿がでて、生検するとfoot processが完全になくなっていた。プロトコルにしたがい移植前後に血漿交換をしたにもかかわらずである。
やがて腎機能も悪化し、このままでは移植腎が廃絶するのは必至で、かつ患者さんには多大な感作リスクが掛かり、二回目の移植可能性が減ってしまう。そこで彼らはこの移植腎を摘出し、ドナーの許可を得てこれを移植リストのトップにいた患者さんに再移植した。すると腎は(FSGSのcirculating factorがないので)正常に機能した。
FSGSの移植後再発は20-30%に見られる(NDT 2010 25 25、あのPonticelliレジメンのPonticelli先生が書いている)。予防に用いる血漿交換はimmunoabsorption with protein A。Circulating factorの除去が目的で、その産生は抑えないのでは?と思われるが、あるRCTスタディ(AJT 2009 9 1081)では治療群が12か月たっても90%の寛解率を示した。
Circulating factorを抑える治療としてはcyclosporine(先発薬なのでtacrolimusよりデータがあるが、比較したスタディはない)、rituximab、galactose IV infusion(Transl Res 2008 151 288)などが用いられている。
IgA腎症はどうか?IgA腎症もまた病原性のある腎外因子が疑われている(その一つはgalactose-deficient IgA1に対する自己抗体、Semin Immunopathol 2012 34 365)ので再発しうる。Mini-review(AJT 2006 6 2535)によれば、生検しないと分からないような再発が50-60%、血尿・蛋白尿・腎機能低下など目に見える再発は13-50%という。血縁ドナーからの生体腎移植で再発リスクが心配されているが、graft survival成績はexcellentで、既存のデータによれば避けるべきではない。
MPGNは免疫染色パターンと補体制御遺伝子の異常によって治療が細分化されるようになった。たとえばCFH/Iが異常なら再発リスクが高く肝腎同時移植、eculizumab、血漿交換が推奨され、MCPが異常なら腎単独移植が推奨される(Semin Thromb Hemost 2010 36 653)。HUSかatypical HUSかは臨床診断が難しいので、補体機能や遺伝子精査が推奨される(HUSなら再発はほぼないが、atypicalなら再発するから)。
MPGNと移植で覚えておくべきは、transplant glomerulopathy(de novo MPGN)。それから、eculizumabはIgG2、IgG4、Kappaで出来ているので、投与後に生検・免疫染色するとこれらが染まる(JASN 2012 23 1229)が異常ではないと、こないだのKidney Weekで報告があった。
抗GBM抗体による腎臓病、それにLupus nephritisで分かっているのは、移植前に病勢がコントロールされているほうが術後成績がよいということだ。腎廃絶後は腎機能を図れないが、抗体価や腎外症状をフォローしたい。たとえば抗GBM抗体では6-12か月抗体価陰性が持続するまで移植を待つよう推奨されている。
糖尿病性腎症だが、再発は高く進行は早い(UCLAのデータはTransplantation 2003 75 66)。Calcineurin inhibitor、ステロイドにより血糖コントロールが悪化するせいもある(NODAT、new-onset diabetes after transplantも多い)。そして糖尿病は腎障害だけでなく心血管系イベント、感染症などのリスクなので、それらによって移植後の生命・QOL予後が低下するかもしれない(CJASN 2011 6 1214)。