よく「英国には透析の年齢制限がある」というが、そんなことはないようだ。それはさておき、超高齢者であっても透析してからの生存期間には個人差がある。それを美しく示したのがDr. Kurella Tamuraのスタディだ(KI 2012 82 261)。末期腎不全の高齢者が治療選択するのをどのようにサポートするか、そのframeworkを作ろうというのが彼女のテーマの一つで、私はいつか彼女に日本に来てお話をしてほしいなと密かに願っている。
それはさておき、高齢者の治療選択においては①個人の志向を尊重すること、②エビデンスの有無を調べること(除外されていることも多いから)、③達成したいアウトカムの質を吟味すること、④副作用・負担・煩雑さなどマイナス面も考慮すること、などの原則が提唱されている(JAMA 2005 294 716)。長期生存については、平均寿命や予後(血液透析患者における、おそらく欧米のデータを参照につくられた計算ツールもある)などが参考になる。
たとえば、AVF(内シャント)とAVG(グラフト)とCVC(長期留置カテーテル)では、CVCで感染リスクが高いことは論を待たない。しかし、余命が2.5年の高齢者を見た場合に、菌血症のリスクはAVFで0.06件/人・年、CVCで0.1件/人・年で、NNTは17だ。ポイントは「高齢者の余命を考えると必ずしもfistula firstではないかもしれない」というように、治療選択には余命やco-morbiditiesを考慮する必要があるということだ。Vascular accessについては、つづく。