2013/11/06

Geriatric Nephrology 3(aka RFT)

 とはいえ、高齢者のCKDをモニターし予防するのが私達の役目だ。そのために何を知っておくべきだろうか?日本でも米国でも「自分の腎臓がどれくらい働いているか知っていますか?」と訊いて答えられた人は少ないが、私はΔeGFR/yrをCKD進行のsurrogateにしているし、どうやら今はそれでいいようだ。問題はどのeGFRを使うかだが、これは別のときに書く。
 ΔeGFR/yrでは、slope-based methodといってグラフで線を引く(これを演者はRenal Function Trajectory、RFTと呼んでいた)。ふつうはまっすぐ下がっていくが、AASKデータを見直したスタディによれば全員がそうなわけではなく、人によっていろんなパターンがある(AJKD 2012 59 504)。ほかのスタディでも同様だ。
 スロープを急峻に下げるうち、最も大きな要因はタンパク尿で、糖尿病性だろうが非糖尿病性だろうがタンパク尿量でmatchするとeGFR低下率には差がない。で、血圧がありACEIがありARBがあり、ONTARGETスタディがあり(ACEI/ARBのコンビネーション、蛋白尿は下がったがGFRが下がった)、禁煙があり食事がありアルカリがあり集学的治療がある。
 AKIはどうか?AKIを起こした後、そのまま透析になる人もいれば、AKIを起こしても回復して、何事もなかったように以前のCKD進行率に戻る人がいる。これがどうしてなのかはあまり知られていないが、これからこの群をよく調べなければならない。
 そしてメインのお話が、高齢者でのeGFR低下についてだ。まず、彼らのeGFR低下は少ない(1ml/min/1.73m2以下)。75歳のCKD4患者の余命は3-4年。85歳のCKD5患者の余命は1.5年。だから、CKD進行で彼らが透析になることは、よほど進行が早くないと余りない。むしろ、彼らが透析になるのはAKIを合併したときだ(JASN 2009 20 223)。だから、AKIの予防と、AKIになったときどうするかのadvanced directiveと議論が必要なのだろう(AJKD 2010 56 122)。