2013/11/05

Geriatric Nephrology 1

 今回、ASNの本会が始まる前の特別プログラム(Early Program)に参加している。フェロー時代は仕事があってこれに参加したくてもできなかった。テーマは、米国にいたときからの興味と、日本で働いてからの切実なニーズで選んだGeriatric Nephrology。
 本講座はこの分野の祖で昨年亡くなったDimitrios G Oreopoulos Memorial Programでもある(私は彼をアイオワ大学に呼ぼうとしてうまくいかなかったので、いまこの講座が取れて嬉しい)。まず老年内科医による導入はこんなだった。
 高齢者は慢性疾患を数多くもち、全部一生懸命(ガイドラインにしたがって)治療すればとても手間とお金が掛かり実現が難しい(JAMA 2005 294 716)うえ、アウトカムも変わらないかもしれない。寧ろ、薬の副作用など害のほうが多いかもしれない。
 ではどうしよう。一言でいえば「患者さんの特性と意見に合わせて、予後を考慮して、Aの治療とBの治療の相互作用を知って、不要な薬を減らし、つかえるお金と制度を活用する」…教科書的だ。で、何を目指しているのか?
 たとえば、インスリンを1日3回打って、どうする?老健で打てるか(打てない)?低血糖になるだけでは?それで転んだり認知機能が低下したりするかもしれない。指先を刺して血糖を計るのは手間だし痛い。他にも一日1回、一包化、合剤、減らすなど工夫があるだろう。
 それが老年医学の困難さで、アウトカムを設定しにくい。EBMは長生きに集中し、薬が長生きさせるかに注目しているから、このグループはしばしば除外されているし、このグループに同じスタディをすべきかも分からない。ただ、知っておくべきは平均寿命と、主要疾患群の平均寿命。そのうえで、残りの時間をどう過ごすかではないだろうか。