2012/02/27

tumor-induced osteomalacia

昨年フェローシップを始めたばかりの頃に診た症例を、レジデントがgrand roundで発表してくれたので「あれからどうなったのかな」という話しの顛末を聴くことができた。これは全く健康な若い男性が急に調子が悪くなり検査すると、血清リン値がとても低いほかはすべて正常というもの。
 この病歴だけで指導医が「この人の体表、特におなかに、脂肪腫はありませんか?」と聞いたのに度肝を抜かれたのだ。彼はFGF-23産生腫瘍をピンポイントに考えていたわけだが、当時の私はFGF-23など名前しか聞いたことがなった。そして何と、患者さんのおなかには脂肪腫があった。
 その他の診察と検査でリンの吸収障害(vitamin D欠乏など)、リンの骨や細胞へのshift(refeeding syndrome)などは除外され、FEP(fractional excretion of P)が高くリンの尿中排泄亢進を疑うにいたった。PTHは正常で、FGF-23レベルをMayo clinicに送ったところで月が変わり私は別のローテ―ションに移っていった。
 果たしてFGF-23は70RU/ml(基準値は<180)。リンをアグレッシブに補給していた時の値なのでどう解釈してよいやらわからない。しかしこの話には続きがあって、外科に例の脂肪腫を切除してもらって以後、この人はリンを補給しなくても血清リン値が安定するようになったのだ。病理標本を特殊染色してFGF-23を産生しているか調べるべきだと私は思うが、FGF-23のcommercially available antibodiesがないそうだ(2011年現在)。
 FGF-23産生腫瘍による低リン血症は別名tumor-induced osteomalaciaと呼ばれ、リビューとしてはこれ(Endocrine-Related Cancer 2011 18 R53)が詳しい。またNew England Journal of Medicineにもcase records of the Massachusetts General Hospitalに紹介された(NEJM 2011 365 1625)ので、もはや腎臓内科医でなくても知っているべきことなのかもしれない。医学の進歩は速いな。