Journal clubでうちの大学も実は参加しているFHN(Frequent Hemodialysis Network)のスタディを議論した。といってもうちの大学はnocturnal dialysisで参加しているので、この論文(NEJM 2010 363 24)とは直接は関係ないが。
これは透析センタ―で一部の患者さんに週3回の代わりに週6回来てもらうことで、primary end-pointとして①死亡率と心左室重量、②死亡率あるいはQOLを比較したものだ。結果としては週6回来た方がよかった。2002年に「透析の効率を上げたら却って悪かった」という結論がでたHEMOスタディから8年後のことだ。
「では(週6回は週3回に比べて)何がよかったのか?」という話になる。そこでJournal clubでは論文が注目したsecondary end-points、なかでも①血清リン値の変化、②IDWG(inter-dialytic weight gain、透析間の体重増加量の変化)、そして③収縮期血圧について議論した。
これらのraw dataにあたると、①(リン)と心左室重量の変化、そして②(IDWG)と心左室重量の変化には相関がない。とくに②と相関がなかったことは多くの腎臓内科医を驚かせた。というのもHEMOスタディを受けて「透析患者さんを長生きさせるのはclearanceではなくvolumeだ」と考えられてきたからだ。
③(血圧)と心左室重量の変化には相関がある。それはそうだろうが、「血圧が改善するのはvolumeをコントールするからでしょう?」と信じていた私たちはこの結果を前に困った。「週6回透析すると血圧が改善するのはなぜ?(volumeじゃないとしたら何が問題なの?)」というわけだ。
もっともここにトリックがあって、体重よりも正確に体液量を把握できるとされているBIA(body impedance analysis)によれば週6回透析を受けた患者さんのほうが体液量が少ない。つまり「頻回透析患者さんは元気になってよく食べて運動して、体重は増えるが体液量は減っているのだ」という仮説はまだ成り立つ。たぶんそういうことなんだろうと思う。