2012/02/27

高アンモニア血症

 外科ICUと働くと、内科と考えが違うので時に面倒だが時にとても刺激的だ。たとえば心臓外科が、「心臓バイパス手術前に透析しておくと、透析患者でない慢性腎臓病患者であっても術後の成績が良いという論文が出たから透析してくれ」と言ってきたり。さてこないだは肺移植後の患者さんが高アンモニア血症で、緊急持続透析してくれという申し出があった。

 彼らによれば、高アンモニア血症は肺移植後のまれだが重篤な合併症で、意識障害をきたし、脳圧亢進の危険もあるという。原因は不明で、尿素サイクルのどこかが先天的あるいは後天的に異常なのだろう。症例報告をみる限り主な治療として透析が行われている(Arch Neurol 1999 56 481、Ann Intern Med 2000 132 283、どちらもペンシルベニア大学)。うちの大学の肺移植外科医もペンシルベニア大学出身だ。

 私たちは肝性脳症に透析をしない。それは透析によりアンモニアを除去するのではなく、アンモニアの産生を抑えるのが治療だと考えるからだ。同じことが乳酸アシドーシスにも言える(ショックが改善できなければ透析で患者さんが助かることはない)。だからこの依頼を受けた時に違和感があったが、結局透析した。しかもCVVHDFでアンモニア濃度が下がらなかったので、効果的に除去するために一回あたり6-8時間のintermittent dialysisを繰り返した。

 おかげで患者さんの意識状態は戻ったが、「アンモニアの産生を抑えなければ透析をやめればまた溜まるのだは?」という私の心配は残っている。今のところlactuloseなども使いながら透析なしでアンモニア濃度は低く保たれている様子だ。別の腎臓内科チームが診療しているので、また当直の時(全チームをカバーする時)にでも彼らに状況を聞いてフォローアップしよう。