腎臓内科に来てから、質の高いRCT(randomized controlled trial)がない領域で診療することが多い。その場合スタッフの経験に基づいた治療を行うことになる。これらの治療は今まで学んだことと矛盾することもあり、どうなることかと様子を見ていると、たいてい効く。それで、むしろ自分が学んだことの根拠は何か、その根拠は有効か、を問われる。アルブミンによるvolume expansion、急性間質性腎炎に対するステロイドなどがその例だ。
アルブミン静注は10年以上前にfurosemideと一緒に使うとintravascular spaceの血液量を保ち相乗効果があると信じられていた。肝硬変患者を対象にした論文(JASN 12 1010 2001)でfurosemide単独と差がなかったりして、この診療は今では廃れている。しかしNephrotic syndrome患者を対象にした論文(KI 55 629 2001)を読むとアルブミンとfurosemideを投与した群では利尿・ナトリウム利尿効果がfurosemide単独よりも優れていた。
利尿効果はさておき、アルブミンによるvolume expansionの効果は疑うべくもない。臨床にいて、すくなくとも栄養失調や肝硬変で低アルブミン血症の患者の一人以上で、アルブミン静注により腎血流が乏しいことによる急性腎不全が改善するのを経験した。また低血圧で低アルブミン血症の透析患者にアルブミン静注すると血圧が安定する。
ただ「それで患者さんは助かるの?」と言われると、栄養失調や肝硬変などの原疾患が変わらない限りは一時的な治療になってしまうだろう。むしろmoratlity benefitについては、ICUにおいてcolloid v. crystalloidについて散々議論されたように、「colloidのほうが血管内にとどまるからよい」という話は話でしかない。
急性間質性腎炎についても、アレルギー反応が全身に回っているような症例(発疹とか低血圧とかを伴うanaphylacticな症例)については、ステロイドが著好するのを経験した。しかしエビデンスはと言われると、スタッフも「10数人のNafcillin-induced AINでステロイドを投与群と非投与群を比べた小さなsingle center study(実際はmethicillin、Am J Med 65 756 1978)が昔あったくらいだ…ちゃんとしたRCTをしないのは腎臓内科医の怠慢だ」という。