2019/04/23

尿から色々と考えてみよう (尿中Clは意外にも有用!?)

 次は尿のクロールについて考えてみよう。

 クロールに関しては、血中クロールの記事を以前に書いている。

 しかし、尿のクロールに関しては注目しているだろうか??

 多くの読者は首を横に振ると思う。この文章から少しでも注目してもらえれば嬉しい。

 UCLやFECLなどはNaと同様に有効循環血液量の推測の間接的なマーカーとして用いられる。UNaとUCLを共に用いることは、特に酸塩基平衡異常を伴う場合には有効循環血液量の推測に有用とされている(AJM 2017)。

 一番多く知られているのが、尿中Clは代謝性アルカローシスの際にCl含有の輸液に対して反応性かどうかを判断する材料となり、それによって原因の推測ができるツールである。

 −尿中Cl<15〜20mEq/Lであれば輸液反応性で、嘔吐、胃液吸引などを考える。上記記載の抗生物質使用も頭の片隅には置いていただきたい。
 −尿中Cl>15〜20mEq/Lであれば輸液反応不良で、Bartter症候群やGitelman症候群やミネラルコルチコイドが上がる病態、甘草などの使用を考える。




 今度は、基本的には尿中Naと尿中Clは同じ動きをするが、例外を見ていこう。

 ・例えば、尿中Naが多く尿中Cl低下があり、循環血液量減少がある場合にはどう考えるだろうか?

 →尿細管で再吸収できない陰イオンが存在することを考える。

 この陰イオンが何かであるが、尿中pHを確認する。

 →尿中pHが7や8であれば再吸収されていない陰イオンは重炭酸イオンと推測され、大量嘔吐や胃管チューブからの胃液の大量排液で、まず水素イオン喪失が生じる。また、NaHCO3が大量に濾過し近位尿細管での再吸収能を超え、遠位尿細管に到達する。
遠位尿細管で、胃液喪失で循環血漿量が低下していることでアルドステロンが働き、Na再吸収が生じ、K尿中排泄が生じる。そのため、低K血症を生じる。尿中ClはNaと同様に動き再吸収されるため尿中Clは低下する(下表C)。尿中Naは再吸収できないNaHCO3の形で排泄され増加する。このようなケースでは、尿中Na/Cl>1.6となる。

 →尿中pH<6であれば、他の再吸収できない陰イオンの存在を考える。ketoanion、チカシリンクラブラン酸、ピペラシリンタゾバクタム、カルベニシリン二ナトリウムなどの抗生物質などを考える。循環血液量が減少している場合に、これらの薬物を投与すると再吸収できない陰イオンとして働き、Naとくっついて遠位尿細管に到達する。循環血液量が低下しており、アルドステロンが働き、Kの尿中排泄が増加する。そして、間在細胞で水素イオンの排泄が生じ尿中pHは低下する。この場合も低K血症を生じる(下表D)。


CJASN 2019


 では、尿中Clが高くて尿中Naが低い逆の場合はどうか?

 →これは、下痢の場面で見かける場合が多い。下痢によって、重炭酸イオンやカリウムが排泄され循環血液量減少、代謝性アシドーシス、低カリウム血症になる。アシデミアになるため尿は陽イオンを排出しようとして、アンモニウムイオンを排泄する。それと同時に尿中Clも排泄され、尿中Clは高くなるという現象が生じる。尿中Naは循環血液量維持のためになるべく再吸収され少なくなる。この場合は、尿中Na/Cl<0.76となっていることが多い。

 少し、細かな話で難しくなってしまったかもであるが少しでも理解の助けになれば嬉しい。






2019/04/22

Veverimer(ヴェヴェリマー)

 「薬のない製薬企業」というと、「薬ではなく幸せや健康、安心といった価値ををつくり提供する企業」、という意味の比喩表現かと思うかもしれない。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル(2018年10月31日付)にそう報じられたTricida社は、文字通り認可された薬が一個もないが、Venture RoundsとIPOで数100万ドルの資金を集めた。

 これは市場(とFDA)が治験中の「ある薬」に期待しているからである。筆者は腎臓内科医なので、読者のご賢察どおりそれは腎臓内科領域の薬で、名前をVeverimerという。先月に第3相がLancetに発表された(Lancet 2019 393 1417)ので、ご存知の方も多いだろう。第2相がCJASN(CJASN 2018 13 26)だったことを考えると、(市場をふくめた)インパクトの大きさがうかがえる。

 まず薬の説明をすると、VeverimerとはH+とCl-をどちらも吸着する、いわば「新世代」の樹脂である。吸着は二段階で、まずアミノ基にH+を吸着し、それにひきつけられる陰イオンのうち(小さくて腸管に豊富な)Cl-がより選択的に吸着されるように分子構造を工夫している。

 こんな薬はよほどの高分子化学のノウハウを持った人でないと作れないだろうが、実際Tricida社のCEOであるGerritt Klaernerは、Max Planck Institute for Polymer Researchを卒業している。そして何を隠そう、昨年の米国腎臓学会で祭りを起こした(こちらも参照)カリウム吸着樹脂PatiromerのRelypsa社の創立者でもある。Tricida社も、その流れで最初はTrilypsa社と呼ばれていた。

 そして治験についてPICOフォーマットで説明すると、P(患者)の治験対象はブルガリア、クロアチア、ジョージア、ハンガリー、セルビア、スロベニア、ウクライナと米国(米国は全体の約10%)の保存期CKD患者200人余りで、介入群の各データ(中央値など)は以下の通り。

年齢 62歳
白人 98%
男性 60%
糖尿病 61%
高血圧 97%
ACEI/ARB内服 67%
利尿薬(ループないしサイアザイド) 60% 
eGFR 29ml/min/1.73m2
HCO3- 17.3mmol/l
アルブミン尿 241mg/gCr(24.8mg/mmolCr) 

 なお、国をこのような選択にした理由は明記されていない。EU内で治験基準が統一されているとすれば、治験参加費の問題だろうか(資金は当然、Tricida社がだしている)。あるいは、このコホートでは重曹使用者が8-10%と少数だったので、重曹使用率の高い国を避けたのかもしれない。

 I(介入)はveverimerを6g/d、12週間。C(対照)はプラセボで、HCO3-濃度が18未満/以上の比率が同じになるようランダム化され、クロスオーバーはしていない。O(アウトカム)はHCO3-濃度が①4mmol/l以上上昇、または②22-29mmol/lを達成した患者割合だった。ほかに、アシドーシスによる骨や筋肉への害をみるため、身体機能なども比較している。

 なお測定はAbbott社のiSTAT®で採血後ただちに行われ、患者は採血前4時間は絶食にされた。絶食の理由は、アルカライン・タイド(alkaline tide)と呼ばれる食後の胃酸分泌の「反作用」で血中にHCO3-が放出される現象による影響を除外するためだ。

 結果、上記アウトカム達成者の割合は介入群で59%、プラセボ群で22%にくらべ有意に高かった。椅子から立ち上がるなどの身体機能検査でも有意差が見られた。なお副作用では消化器症状が多く、とくに下痢は介入群で9%、プラセボ群で3%だった。

 効果のある薬が増えたのは喜ばしいことだ。今後、重曹との差や、よりハードなエンドポイント(腎予後、生命予後)での効果が検証されたときに、「価格に見合った価値があるか?」という話になるのだろう。欧米で認可されれば、Patiromerのように日本でも治験されるかもしれない(ただし、パチロマーのように透析患者で用いられることはまず考えにくいが)。

 ポリマー技術が今後さらに応用されて、「腸管分子標的薬(または、利尿薬ならぬ利便薬)」の開発がさらに進むことが予想される。腎臓内科医も、腸管の生理学やチャネル(こちらも参照)に詳しくなる必要があるだろう(上述のアルカライン・タイドも、筆者は正直最近まで知らなかった)。





 なお創薬という意味で、化学の次はなんだろう?おそらく生物製剤なのだろう(遺伝子もまた、書き換えと合成の可能な「ポリマー」のひとつだ)。倫理的な障壁や、環境面への影響が懸念されるのでその時代はすぐには来ないと思われるが、いずれ「降圧菌」「吸着菌」といった治療ができるようになるかもしれない。
 

2019/04/16

びっくりする低ナトリウム血症

 低ナトリウム血症の相談を受けると、いつでも心が引き締まる。その理由のひとつは、「プロ」としてみっともない真似はできない、という思い。自意識過剰かもしれないが、「腎臓内科のお手並みを拝見しましょう」と周囲から注目されているような気になる。

 もうひとつは、過補正のリアルな「リスク」だ。高ナトリウム血症のほうは、従来の0.5mEq/l/h(10mEq/l/d)未満より急速な群でも合併症に有意差が見られなかったという報告がCJASNにでた(doi.org/10.2215/CJN.10640918)が、低ナトリウム血症は別だ。

 しかし、そうはいっても鑑別疾患はだいたい決まっているので、順を追って診断していけばそう滅多なことは起きないと思っていたら、びっくりするような低ナトリウム血症の原因があることを発見した。

 それは、「尿閉」である。

 別に、びっくりしなかった読者もおられるかもしれない。たしかに、尿閉で尿が出なければ水が出せないのだから、低ナトリウム血症になるのは当たり前かもしれない。しかし、ここでいう低ナトリウム血症は、水腎症や腎後性の腎障害を伴わない。
 
 報告は(Saudi J Kidney Dis Transpl 2017 28 392、JAGS 2014 62 1199、Gerontology 2007 53 121)いずれも、①膀胱が過伸展しており、②尿浸透圧は血清浸透圧より高くSIADHが示唆され、③尿道カテーテルの挿入で軽快し、④カテーテルの抜去で増悪する、といった特徴を持っている。

 膀胱の過伸展は心因性多飲における低ナトリウム血症の増悪因子としても知られている(J Urol 1992 147 1611)。機序は不明だが、これら論文はいずれも「膀胱の過伸展による(交感神経刺激を介するかもしれない)ADH分泌」と推察している。

 筆者も経験したことがあるが、尿閉による低ナトリウム血症は、知らないと驚きの連続になる。

 尿検しようにも「尿がでない」というのでCTを撮ると信じられないほど拡張し壁の薄い(下写真の紙風船のような)膀胱が写っていたり、尿カテーテルを挿入すると尿崩症かと思うような希釈尿が出て急激なナトリウム濃度上昇が心配されたり、抜去するとストンとナトリウム濃度が下がったりする(そして、再挿入するとまた上がる・・!)。





 それは、結局のところカテーテルでなおってしまうことで、低ナトリウム血症の「高尚な病態生理を操って頭を使う、レベルの高い疾患」、というイメージが崩れる驚きでもある。

 筆者は研修医時代に「低ナトリウム血症だけは永遠に理解できないだろう」と思った。難解なことを例えるのに「それは低ナトリウム血症のようなものだ」と言っていたこともある。

 しかしそのうち(それなら飽きないかも)と思い始め、気づけば腎臓内科医になっていた。

 やはり、これだから低ナトリウム血症はやめられない。



2019/04/05

他山の石

 先月、ガイドワイヤーの重要性と危険性について論じたが、「抜き忘れ」については論じなかった。しかし、医療事故情報収集等事業がおこなった調査の第34回報告書(透析関連の事故をあつかったIII、2【1】)によれば、2004年から2013年までに、穿刺時の「外套(注:外筒の意味だろう)・ガイドワイヤーの残存」の事例が9件あった。うちガイドワイヤーは5件だが、リアルな数字だ。

 報告書には具体的な事例が二つ挙げられているが、ひとつは:

血液浄化用のダブルルーメンカテーテルを鼠径部から挿入留置した。その後血液浄化装置にて血液透析を開始したところ送血管の圧が高く、脱血管に切り替えた。送血管の圧の高さを調べるためにエックス線撮影したところ、ガイドワイヤーの遺残を発見した。小切開にて、ガイドワイヤー、カテーテルを抜去した。改めてカテーテルを挿入し透析を開始した。

 「遺残」とあることから、ガイドワイヤー抜去時にガイドワイヤーが途中で切れた可能性がある。幸い筆者にはその経験がないが、逆に言えば同じ事故に遭遇しても知らなければこの報告同様に気づくのが遅れたかもしれない。

 ただし背景には「カテーテルを留置した際に、ガイドワイヤーを抜くことを失念した」とあり、遺残ではなく全部だった可能性もある。脱血・送血用のルーメン以外にもうひとつ(通常のCVカテーテルとしての)ルーメンがあって、そこからガイドワイヤーがでてくる仕組みだったのかもしれない。

 また、大腿静脈から挿入するのはたいてい緊急なことがおおく、反省点として「早く透析を開始したいと焦りがあった」と挙げられているのを見ると、(その気持ちはよくわかるので)他人事ではないなと身につまされる。

 もうひとつの具体例はICUで、内頚静脈に入っていた中心静脈カテーテルを切って、そこからガイドワイヤーを挿入して透析用カテーテルに入れ替えを試みた際に、断端が静脈内に入ってしまった・・・というものだ。

 これについて報告書は「医師が過労のため体調不良であり、注意力が落ちていた可能性が高い」などと考察している。「過労」、「体調不良」などと聞かされると、働き方と体調を管理することも「カテ道」にとって大事な要素だなと改めて痛感する。


 報告書は、こうした事例を受けての改善点に「院内で事例を共有する」を挙げている。それはもっともだし、じっさい報告書がPDFとして(建設的な意味で)院外に共有されている(リンクはこちら)のは本当にありがたい。ぜひ、他山の石として肝に銘じたい(下図は日本医療機能評価機構ウェブサイトより)。





2019/03/29

カテーテル留置にあらまほしき事

 腎臓内科フェローが当直で緊急に透析カテーテルを挿入するのは、日本でも米国でも同じだ。しかし米国では「やりたい人がやればよい(そのほうが患者も安全だ)」という風潮が高まっており、CJASNでも2018年に賛否両論が掲載された(「必修であるべき」がCJASN 2018 13 1099、「必修でなくてよい」がCJASN 2018 13 1102)。

 筆者は、8年前のある出来事がいまだに忘れられず(1、2、3)、その後も「カテ道」で経験を積ませていただき、現在の施設でもカテを入れている。そんなわけで、大腿静脈からガイドワイヤーの付属していないCVカテーテル(透析用ではないもの)キットを挿入したある日のこと。

 そのキットは、穿刺針の外筒がシース・イントロデューサーのような役割を果たし、その内腔からカテーテルを挿入する(挿入後は外筒を剥いて除去できるようになっている)ものだった。

 しかしカテーテルだけでは操作性がわるく、少しでも抵抗があると(左で総腸骨静脈と動脈が交差するなど)進まないし、一旦細い静脈に迷入するとバックはできるが方向転換ができない。抜いたり出したりするたび位置確認にポータブルX線を撮っても、埒が明かない。

 しかし、CVカテーテルは「カテーテル」というだけあって、どれも「何ゲージ」という以外に、内腔に「何インチ(0.025、0.035など)」のガイドワイヤーが入るか明記してある。そこで、透視下にカテーテル内腔からガイドワイヤーを進めると、するすると容易にIVCに入ってカテーテルを導いてくれた。

  吉田兼好の『徒然草』第52段は仁和寺の和尚が石清水八幡(写真)に行った時の話で、「少しのことにも、先達はあらまほしき事なり」とある。




 ガイドワイヤーもまた、あると大変ありがたいものである。

 しかし、注意すべき点もある。それは、先端がどこにいるかわからないガイドワイヤーは、却ってあぶないということだ。

 たとえば内頚静脈からCVカテーテルを挿入する場合、ベッドサイドでガイドワイヤーの先端位置を確認することはむずかしい。「心電図モニターで不整脈(心室性期外収縮や非持続性心室頻拍)が出れば心室内だから、引きましょう」などというが、それ以外にも迷入してほしくない(穿破してほしくない)場所は沢山ある。

 だから筆者は、最近もっぱら(透析用か、短期・長期用かを問わず)CVカテーテルはカテ室で挿入することにしている。安全には替えられないからだ。

 「少しのことにも、ガイドワイヤーと透視はあらまほしき事なり」とでも言おうか。




 

2019/03/07

尿からも色々と考えてみよう (尿中Naの使い方と注意点)

 尿の生化学検査を使うことは多いだろうか?

 腎臓内科医は使うことも多いかもしれないが、使い道に迷う時も多いと思う。

 今回は基礎的なことから少しこの部分に触れたい。

・尿中Na (ナトリウム)

 通常は尿中Na排泄量は、食事の摂取量から汗、便排泄での喪失量を差し引いたものになる。通常は40-220mEq/day程度と言われる。

 有効循環血液量が少ない時は、交感神経やRAA(レニン・アンジオテンシン・アルドステロン)系が働き、尿中Na排泄を<15mEq/Lにし、Na喪失を避け有効循環血液量を維持する。

 有効循環血液量が多い時は、ANP(atrial natriuretic peptide)などが放出され、尿細管でのNa再吸収を抑制し尿中Na排泄を促進している。

 ☆尿中Naは有効循環血液量を間接的に測定する手段として、Na異常症の診断にも用いられている。

 また、FENaを用いる場面も多い。これは、腎臓から尿のNa排泄割合を示している。


FENa = (UNa × P crea / P Na × U crea) × 100


 尿中Na濃度は利尿剤などを使用している場合などは測定誤差が出てしまう。

 尿中NaやFENaを利用する場面:

 ・AKIの原因が腎前性か腎性(ATN:急性尿細管壊死)かを鑑別する材料として使用される。

 尿中Na<15mEq/LやFENa<1%は腎不全の原因が輸液に反応する腎前性が原因を示唆する。

 もともと腎機能のベースが悪い(CKD)の人にもこの式は使用できるのか?

 →正常腎に比して尿中Na移行が少なく、反応は遅くなることに留意して使用すれば有用。

 この鑑別方法を用いて、鑑別できない場合はあるか?

→下記の病態には注意が必要

 早期:腎血管収縮が生じGFRが低下、まだ尿細管は問題なし(腎前性の値が出る)
 晩期:早期の状態が持続し、尿細管壊死が生じ尿中Na増加(腎性の値が出る)

 上記の場合は、測定するタイミングによって数値が変化するので注意する。

 上記の状態を起こしうるものとして、下図にもあげたような敗血症やNSAIDs使用や横紋筋融解症など我々が遭遇し安いものということはチェックしておく必要はある。




 ☆FENaの感度・特異度が最も高い場合は乏尿を伴い、GFRが低下している場合であることは知っておくべきである!

 FE urea

 利尿剤使用時は尿中NaやFENaの数値は正確ではなく、その場合にはFEureaが診断の助けとなる。


                                 FE urea = (U urea × P crea / P urea × U crea) × 100


 FE urea < 35%が有効循環血液量減少を示唆すると言われている。

 ureaは水とともに近位尿細管で再吸収されるため、サイアザイドやループ利尿薬の使用での影響を受けない。

 しかし、近位尿細管の障害を生じうるアセタゾラミド投与中やマンニトール、グリセオールなどの浸透圧利尿薬使用中は正確ではなく、urea産生が増加しうるタンパク質過剰摂取や体内異化の亢進での使用は注意する。

 副腎不全時は、遠位尿細管でのミネラルコルチコイド作用不足により、Na利尿が生じ有効循環血液量が減少しFE ureaも減少する。

 FE urea使用の注意点は?

 ・利尿剤の使用がない状態ではFENaに代わって使用すべきではない。

 ・敗血症や高齢者使用時には注意(エンドトキシンや高齢によりurea transporterがdown regurateして、FE ureaの値が高く出やすくなってしまう。)






2019/03/01

腎臓内科医が考えるC型肝炎について。

 皆さんはC型肝炎(HCV)の診療は得意だろうか?

 多くの腎臓内科医は首を横に振る人も多いかと思う。筆者もその一人である。

 KDIGOからCKDにおけるHCVのガイドラインが出ており、それを見ながら少し勉強できたらと思う。

 今回は、簡単な記載であり実際には直接ガイドラインを見ていただきたい。

 評価のタイミング

 以前の2008年に比べて、より細かく提言された。

 ・CKD患者
  −CKD評価の最初の段階でHCVスクリーニングを行う(1C)。
  −抗体検査が陽性の場合には、NAT(核酸増幅検査)によってHCV-RNA検査を行う(1A)。
  −HCV感染患者には肝臓の繊維化を評価を行う(1A)

 ・透析患者
  −施設透析開始時、または透析機器の変更や方法変更時にHCVスクリーニングを行う(1A)。
  −施設透析では、6ヶ月毎に抗体検査とNAT検査を行う(1B)。
  −NATだけ、もしくは抗体検査が陽性時にNAT検査を行う(1A)。

 ・腎移植患者
  −腎移植評価の際にHCVスクリーニング評価を行う(1A)。

 肝繊維化評価目的に肝生検などの侵襲的な検査は行うべきではない。

 ☆抗体検査

 下記に簡単な手順のアルゴリズムの表を載せる。




 HCV感染の治療(CKD患者、移植患者)

 以前のガイドラインと比べインターフェロンの使用推奨がなくなった。

 ・HCV感染のある、すべてのCKD患者に対して抗ウイルス治療可能か評価を行う(1A)。
  −インターフェロンなしの治療を推奨(1A)
  −HCVのgenotype、ウイルス量、治療歴、薬剤の反応、GFR、肝臓繊維化の程度、合併疾患の程度、腎臓・肝臓移植の適応(1A)

 ・GFR≧30ml/min/1.73m2 (CKD G1-G3b)の患者では、DAA(direct-active antiviral)治療のレジメンが推奨(1A)

 ・GFR <30ml/min/1.73m2 (CKD G4-G5D)の患者では、リバビリンを用いないDAA治療を推奨。




 ・腎移植患者ではHCV治療時に評価をする。
  −DAAを基本とした治療を推奨(1A)
  −HCVのgenotype、ウイルス量、治療歴、薬剤の反応、GFR、肝臓繊維化の程度、合併疾患の程度、腎臓・肝臓移植の適応(1A)
  −インターフェロンを含めた治療は避ける。



 薬剤について:




 透析施設でのHCV感染の予防:

 これに関しては、2008年のガイドラインとの違いはない。

 ・感染管理と手指衛生が非常に重要(1A)。
 ・HCV患者に専用の透析機械を用いることは推奨されない(1D)。
 ・HCV感染患者の隔離は推奨されない(2D)。

 腎移植前後のHCV感染の管理:

 2008年からDAAの使用推奨もあり抜本的に改訂された。

 ・代償性肝硬変患者では腎移植単独(肝腎同時移植でなく)が推奨される。
 ・HCV感染ドナーはHCV感染レシピエントに移植すべき。
 ・DAA治療のタイミングは個々のケースで決定すべき。下記の表を参照。




 HCV感染患者の腎疾患の診断と治療:

 ・HCV関連腎症の治療は初期治療として、DAAでの治療を行い、クリオグロブリンの増悪、ネフローゼ症候群の発症や急速進行性腎障害が生じている場合には、免疫抑制剤や血漿交換を追加使用検討する。

 このHCVのガイドラインは我々が臨床を行う上で非常に重要である。

 このガイドラインでは、DAA治療が中心となっている。DAA治療において難点はが高コストである。なので、低所得国など多くの国で純粋に踏襲できない可能性はあることには注意するべきである。


http://chiba-kantomo.com/hepatitis-commentary/2431 より引用