24時間蓄尿検査が外来で出来れば、透析が必要かどうかボーダーラインな腎機能の患者さんに蓄尿ボトル(下図)を渡して24時間クレアチニンクリアランス(または尿素クリアランス)を測ることもできるし、尿路結石の患者さんにボトルを渡して24時間あたりの尿量・尿Na・尿K・尿Ca・尿Mg・尿P・尿シュウ酸・尿クエン酸などを定量して予防の計画を立てることも出来る。
またFanconi症候群など尿細管での再吸収障害(による腎性喪失)を疑った時にも同様に尿Ca・尿P・尿尿酸・尿糖・尿アミノ酸などを定量することができる。患者さんには「朝一番の尿の次から採尿を始めて、翌朝一番の尿まで採ってください」と指導していた。
しかし、24時間蓄尿検査を入院しないと出来ないと言われると、スポット尿で勝負するしかない。その方法は大きくふたつあり、ひとつは尿量を推定して掛け算すること(例えば尿Na濃度が150mEq/lだったら尿量1.5L/dayと仮定して225mEq/day、つまり約13g/dの食塩摂取が示唆される)。だが、尿量の推定なんてできないからアバウトな感じになる。
もうひとつはクレアチニンで割ることだ。これも24時間蓄尿には劣るが、尿Ca/尿Cr>250mg/gで高い、FECa<1%で低い(FHH;familial hypocalciuric hypercalcemiaなどで)、FEリン>5%で高い、FE尿酸>10%で高い、などネットとか色々調べて解釈している。
[2019年1月追記]24時間蓄尿してクレアチニン・クリアランスを求める方法をおさらい(ここにもあるが、順に導出してみる)。クリアランスのU(尿濃度)×V(尿量)/P(血中濃度)でよいのだが、単位をあわせるのが少し手間かもしれない。
1日クレアチニン排泄量(さっきのU×V)は「mg/日」、血中濃度は「mg/dl」で、そのまま割ると「dl/日」になる。ふつうクリアランスは「ml/分」なので、「dl/日」は「100ml/1440分」。
100/1440の0.069(約7%)を掛けるもよし、100/1440は1/14.4だから14.4で割るもよし。たとえば一日クレアチニン排泄量が1000mgで血中クレアチニンが1mg/dlならクリアランスは1000dl/日なので、(掛けても割っても)70ml/min程度になる。
でもまあ、1日あたりのクリアランスを考えるのにも意義はあって、たとえば上記なら1日に100リットルの血液をろ過していることになる。つまり99%がた再吸収しているわけで、すごい仕組みを発達させたものだなと思う(このブログの冒頭にも書いている通りだ)。
なお、Cockroft-Gault、MDRD、CKD-EPIなどについてはこちらも参照されたい。
クマさんがおしっこしないで冬眠できるのも、じん臓が一日に体液の何十倍もろ過してから不要なものを残して再吸収するのも、じん臓の替わりをしてくれる治療があるのも、すごいことです。でも一番のキセキは、こうして腎臓内科をつうじてみなさまとお会いできたこと。その感謝の気持ちをもって、日々の学びを共有できればと思います。投稿・追記など、Xアカウント(@Kiseki_jinzo)でもアナウンスしています。
2015/05/20
FDA warning!
糖尿病薬市場を席巻する勢いで各社が雨後の竹の子のように開発し宣伝する(ので同じような説明を何度も何度もお弁当を食わされて聞かされる羽目になり辟易している)SGLT2阻害薬だが、残念なお知らせが届いた。FDAが5月15日にcanagliflozin、dapagliflozin、empagliflozinでDKAとケトアシドーシスの報告が相次いでいるという警告を出し、引き続き調査を行っていくからうえの三剤に限らずすべてのSGLT2阻害剤を処方する(内服する)際には慎重に、と発表した。
その4日後、昨日のお薬屋さんの説明会もSGLT2阻害薬についてだったのに、そんなこと一言も言ってくれなかった。ただ「長期処方が可能になりますので是非ご検討ください」としか言われなかった。私が毎日受け取る米国腎臓内科学会のニュースレターのトップニュースだったから初めて知った…。ここまでくると、お薬屋さんが怖い。売れさえすればいいのか?各担当者ごとにノルマとかがあるから仕方ないのか?患者さんのためには「効く」というよい情報も「危険」という悪い情報も包み隠さず教えてくれるのがフェアプレーじゃないのか?調査中だからまだなんとも分からない、濡れ衣だったということもありえる訳だし。
[追加]この報告は、SGLT2阻害剤内服によってつくられるグルカゴン過剰状態(先日書いた)と符合するかもしれない。グルカゴン過剰はDKAにcontributory(if not essential)で、この環境下では肝細胞でアシルCoAがcarnitine palmityl transferase reactionsによってどんどんミトコンドリア内に入り、β酸化によりどんどんアセチルCoAができ、これがTCA回路に入りきれずに、アセト酢酸(ケトン体)に代謝される。
[2016年6月追加]CanagliflozinのCANVASトライアルで投与群には脚、趾の切断が有意に多いという途中経過の安全報告が出たと5月18日にFDAが発表し、調査中だ。またその数週間後にFDAがCanagliflozin、DapagliflozinにAKIの注意喚起をつけた。Empagliflozinはアメリカで処方が少ないのためか報告が少なくラベルはつかなかった。
その4日後、昨日のお薬屋さんの説明会もSGLT2阻害薬についてだったのに、そんなこと一言も言ってくれなかった。ただ「長期処方が可能になりますので是非ご検討ください」としか言われなかった。私が毎日受け取る米国腎臓内科学会のニュースレターのトップニュースだったから初めて知った…。ここまでくると、お薬屋さんが怖い。売れさえすればいいのか?各担当者ごとにノルマとかがあるから仕方ないのか?患者さんのためには「効く」というよい情報も「危険」という悪い情報も包み隠さず教えてくれるのがフェアプレーじゃないのか?調査中だからまだなんとも分からない、濡れ衣だったということもありえる訳だし。
[追加]この報告は、SGLT2阻害剤内服によってつくられるグルカゴン過剰状態(先日書いた)と符合するかもしれない。グルカゴン過剰はDKAにcontributory(if not essential)で、この環境下では肝細胞でアシルCoAがcarnitine palmityl transferase reactionsによってどんどんミトコンドリア内に入り、β酸化によりどんどんアセチルCoAができ、これがTCA回路に入りきれずに、アセト酢酸(ケトン体)に代謝される。
[2016年6月追加]CanagliflozinのCANVASトライアルで投与群には脚、趾の切断が有意に多いという途中経過の安全報告が出たと5月18日にFDAが発表し、調査中だ。またその数週間後にFDAがCanagliflozin、DapagliflozinにAKIの注意喚起をつけた。Empagliflozinはアメリカで処方が少ないのためか報告が少なくラベルはつかなかった。
2015/05/19
質問というプレゼント
日本には「出る杭は打たれる」という諺があるが、英語には"squeaky wheel gets the oil(キーキー音を立てる車輪がオイルをもらえる;しっかり自己主張した者が欲しいものを得られる)"という諺がある。でも日本にも「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」という諺がある。だから分からないことはためらわずに聞いたほうがいい。
と、お説教しようと思ったら別のチームの研修医の先生から「あの…お時間のあるときに質問があるのですが…」とエレベーターのなかで声を掛けられた。研修医の相談は指導医の勲章だから、私を選んでくれて有難いなあと質問を聞いてみると、何十個もずっと溜め込んできた事が分かった。勇気を出して長い間秘めた思いを伝えられて偉かったね、プレゼントをありがとう。
それで、一個目の質問は「レジオネラ肺炎の低Na血症はどれくらい低いんですか?」だった。(知らん)と思ったが、知らないことを調べる方法を知っているのが指導医というわけで、まずUpToDateをみると「130mEq/l以下になることが他の肺炎に比べて多い」と書いてあった。
すると次の質問は「レジオネラ肺炎で低Na血症になるメカニズムは何ですか?」だった。また(知らん)と思ったが(面白い!)とも思った。こういういい質問から考えるきっかけをもらえるから、私は質問を受けるのが好きだ。で、今度はUpToDateに載ってないので例のGoogle Scholarを調べると、SIADHと考えられてきた(Medicine 1980 59 188)が、嘔吐や下痢などでhypovolemiaを合併(尿Na濃度が一桁)して"appropriate"なADH分泌で低Na血症になった症例報告(BMJ 1982 284 558)もでてきた。
と、お説教しようと思ったら別のチームの研修医の先生から「あの…お時間のあるときに質問があるのですが…」とエレベーターのなかで声を掛けられた。研修医の相談は指導医の勲章だから、私を選んでくれて有難いなあと質問を聞いてみると、何十個もずっと溜め込んできた事が分かった。勇気を出して長い間秘めた思いを伝えられて偉かったね、プレゼントをありがとう。
それで、一個目の質問は「レジオネラ肺炎の低Na血症はどれくらい低いんですか?」だった。(知らん)と思ったが、知らないことを調べる方法を知っているのが指導医というわけで、まずUpToDateをみると「130mEq/l以下になることが他の肺炎に比べて多い」と書いてあった。
すると次の質問は「レジオネラ肺炎で低Na血症になるメカニズムは何ですか?」だった。また(知らん)と思ったが(面白い!)とも思った。こういういい質問から考えるきっかけをもらえるから、私は質問を受けるのが好きだ。で、今度はUpToDateに載ってないので例のGoogle Scholarを調べると、SIADHと考えられてきた(Medicine 1980 59 188)が、嘔吐や下痢などでhypovolemiaを合併(尿Na濃度が一桁)して"appropriate"なADH分泌で低Na血症になった症例報告(BMJ 1982 284 558)もでてきた。
HOPE Act
昔はAIDSでばたばた亡くなっていたHIV感染患者さん達がHAART時代になって長生きできるようになるにつれ、慢性疾患の治療が重要性を増していることは、以前米国のHIV clinicにいたときに感じた(と以前書いた)が、腎臓領域ではHIVAN(HIV-associated nephropathy;典型的にはFSGSだが薬剤性とかいろいろ)でESRDになることが問題になっている。米国ではHIV感染者の死因10%がHIVANで、African AmericanのESRD原因の三位がHIVANだという。HIV感染患者さんに腎移植すると、免疫抑制でHIV感染が再燃するのではないかと心配されるので、多くの人が透析になっている。
しかし、basilizimabで導入してCsA+sirolimus+ステロイドのレジメンを使ったら、HAARTが効いていればCD4カウントやRNAのundetectable状態は維持されて、グラフト生着率と生存率も他のハイリスク症例と同程度だったという一施設報告はある(KI 2005 67 1622)。またUNOSを見直して見ると、HIV感染の患者さん達において長期のグラフト生着率はHIV非感染の患者さんにくらべて劣るものの、患者を適切に選択する・生体腎・CIT(cold ischemia time)の短縮・免疫抑制を適切に選択するなどの工夫をすればグラフト生着率は改善できるのではという報告もある(Arch Surg 2009 144 83)。
というわけでHIV感染のESRD患者さん達にもっと腎移植の機会を増やそうとして2013年に米国で通過した法案がHOPE(HIV Organ Policy Equity) Actだ。それまでHIV感染腎を移植することは触法行為であったが、HIV感染患者にならHIV感染腎を移植しても問題ないだろうということでそれを可能にしたのがこの法律だ。これで、年間数百件のHIV感染レシピエント-HIV感染ドナー間の移植が可能になるのではという試算がAJTに報告された(DOI: 10.1111/ajt.13308)←が、こんな論文が法律施行後2年で出るということは、まだHIV感染腎移植は少ないということなのだろう。なお同様の例はHCV感染でもみられ、これは日本でも行われているようだ。
[追加]米国で働いている先生から教わったが、HOPE ActでHIV-HIV腎移植はニューヨークやサンフランシスコを中心に行われているそうだ。また、HIV-HIV腎移植の実績が南アフリカからNEJMに報告された(NEJM 2015 372 613)が、それについてのletter to the editor / correspondence(NEJM 2015 372 2069)も先週でた。論文を見直すと、グラフト腎にHIVANをきたしたり(二種類のstrainが共存するためか、腎がHIVのreservoirになるためか)、免疫抑制剤とHAARTが相互作用を起こしてCNI toxicityになったりしていた(HAARTはintegrase strand-transfer inhibitorsをベースにしたレジメンだとCYPへの影響が少なく相互作用が押さえられるのではないかと言われている)ようだ。
しかし、basilizimabで導入してCsA+sirolimus+ステロイドのレジメンを使ったら、HAARTが効いていればCD4カウントやRNAのundetectable状態は維持されて、グラフト生着率と生存率も他のハイリスク症例と同程度だったという一施設報告はある(KI 2005 67 1622)。またUNOSを見直して見ると、HIV感染の患者さん達において長期のグラフト生着率はHIV非感染の患者さんにくらべて劣るものの、患者を適切に選択する・生体腎・CIT(cold ischemia time)の短縮・免疫抑制を適切に選択するなどの工夫をすればグラフト生着率は改善できるのではという報告もある(Arch Surg 2009 144 83)。
というわけでHIV感染のESRD患者さん達にもっと腎移植の機会を増やそうとして2013年に米国で通過した法案がHOPE(HIV Organ Policy Equity) Actだ。それまでHIV感染腎を移植することは触法行為であったが、HIV感染患者にならHIV感染腎を移植しても問題ないだろうということでそれを可能にしたのがこの法律だ。これで、年間数百件のHIV感染レシピエント-HIV感染ドナー間の移植が可能になるのではという試算がAJTに報告された(DOI: 10.1111/ajt.13308)←が、こんな論文が法律施行後2年で出るということは、まだHIV感染腎移植は少ないということなのだろう。なお同様の例はHCV感染でもみられ、これは日本でも行われているようだ。
[追加]米国で働いている先生から教わったが、HOPE ActでHIV-HIV腎移植はニューヨークやサンフランシスコを中心に行われているそうだ。また、HIV-HIV腎移植の実績が南アフリカからNEJMに報告された(NEJM 2015 372 613)が、それについてのletter to the editor / correspondence(NEJM 2015 372 2069)も先週でた。論文を見直すと、グラフト腎にHIVANをきたしたり(二種類のstrainが共存するためか、腎がHIVのreservoirになるためか)、免疫抑制剤とHAARTが相互作用を起こしてCNI toxicityになったりしていた(HAARTはintegrase strand-transfer inhibitorsをベースにしたレジメンだとCYPへの影響が少なく相互作用が押さえられるのではないかと言われている)ようだ。
2015/05/18
HRS
肝硬変においては門脈圧亢進とbacterial translocationに伴う腸管NO産生によるsplanchnic vasodilatationで血液のpoolingが起こり、結果effective arterial blood volumeが減って腎臓がunder-filledになる(NEJM 2009 361 1279)。この大前提をHRS(hepatorenal syndrome;肝腎症候群) physiologyと呼んだりしていた。しかしHRSとHRS physiologyは少し違う。HRSは、HRS physiology以外の要因がないにもかかわらず純粋なHRS physiologyで腎が干上がってpre-renal azotemiaになることを言う。
だから理論上はHRSでは肝臓がすべて悪くて腎臓はまったく悪くない(から肝移植すればよくなるはずだし、ドナー提供意思のあるHRS患者さんが亡くなってその腎を移植すれば正常に機能するはずである、あくまで理論的には。それについては以前に書いた;リンク1、リンク2、リンク3、リンク4、リンク5)。つまりHRSは利尿剤によるeffective arterial blood volumeの減少、低アルブミン血症、出血性ショック、NSAIDsなど薬剤、B/C型肝炎・ウィルソン病など肝臓にも腎臓にも障害を起こすものなどを除外して診断する。具体的な診断基準は(AJKD 2012 59 874);
①腹水のある肝硬変
②S-Cr>1.5mg/dl
③二日以上利尿剤を中止しアルブミンを負荷(1g/kgまたは100g)してもCrが改善しない
④ショックがない
⑤腎毒性の薬剤使用がない
⑥腎実質の疾患がない(蛋白尿>500mg/d、血尿>50RBC/hpf、腎エコーの異常所見)
心腎症候群は大して臨床的意義なく五分類されているが、肝腎症候群は1型と2型に分かれその臨床的意義は大きい。1型HRSは急速に腎機能が悪化するものをいい、2週間以内でS-Crが倍になるか2.5mg/dl以上に達する。治療しなければaverage median survivalは2週間だ。2型HRSは1型に当てはまらないより緩徐な腎機能の悪化をいう。2型HRSのaverage median survivalは約半年とされる(下図)。
1型HRSは基本、肝移植が第一選択だ。そうしないと死亡率が余りに高いので、MELDスコアにもS-Crが入っているわけだ。しかし肝臓がどっかに落ちているわけではないので、それまでは血管収縮薬とアルブミンの併用が行われ、データがあるのはterlipressinだがmidodrineやnorepinephrineを用いることもある。2型HRSの治療も根治的には肝移植だが、こちらは治療の有効性を示すよいデータがあまりない。この論文は大容量腹水穿刺(+アルブミン補充)、norfloxacin(bacterial translocationを防ぐためだろうか)、血管収縮薬がリストされていた。大容量腹水穿刺を繰り返すのが面倒ならALFApump®といって持続的に腹水を膀胱に流すデバイスを使ってもいいかもしれない(下図;日本にもあるのかな)。
HRSの予防は良いデータがない。アルブミンのルーチンな補充は現在では推奨されていない。Norfloxacinの予防内服は小さなデータがあるようだ。急性アルコール性肝炎におけるHRSの予防でpentoxyfyllineが試されたことがある(がpentoxyfyllineはHRS予防じゃなくてもアルコール性肝炎にどのみち用いられるはず)。V2 selective receptor blocker(vaptan)が予防するかもしれない。データがないから著者も小さなスタディを見つけて書きたい放題だ。
とまあHRSについて書いたが、うえに紹介したNEJMとAJKDのレビューが秀逸なのでそれを参考にしたらいいと思う。教科書的な投稿になってしまって申し訳ない。もっと熱血だったり面白みがあったりしたほうがこちらも書き甲斐があるし読者のみなさんも読み甲斐があるだろうに…。でもまあいいか、たまにはこういう平穏な投稿があっても(朝カンファで「HRSだけで30分語れる」と発言したら「じゃあやって」と言われたので有限実行で書いている)。
[追加]HRS-type AKIに関する国際腹水クラブのレビューが出た(J Hepatol 2015 62 968)。まだ詳しく読んでないが、診断基準からS-Crの値が消えて、そのかわりに国際腹水クラブが提唱するAKIのステージングを採用している。治療の基本原則とコンポーネントはほぼ変わりないようだ。
だから理論上はHRSでは肝臓がすべて悪くて腎臓はまったく悪くない(から肝移植すればよくなるはずだし、ドナー提供意思のあるHRS患者さんが亡くなってその腎を移植すれば正常に機能するはずである、あくまで理論的には。それについては以前に書いた;リンク1、リンク2、リンク3、リンク4、リンク5)。つまりHRSは利尿剤によるeffective arterial blood volumeの減少、低アルブミン血症、出血性ショック、NSAIDsなど薬剤、B/C型肝炎・ウィルソン病など肝臓にも腎臓にも障害を起こすものなどを除外して診断する。具体的な診断基準は(AJKD 2012 59 874);
①腹水のある肝硬変
②S-Cr>1.5mg/dl
③二日以上利尿剤を中止しアルブミンを負荷(1g/kgまたは100g)してもCrが改善しない
④ショックがない
⑤腎毒性の薬剤使用がない
⑥腎実質の疾患がない(蛋白尿>500mg/d、血尿>50RBC/hpf、腎エコーの異常所見)
心腎症候群は大して臨床的意義なく五分類されているが、肝腎症候群は1型と2型に分かれその臨床的意義は大きい。1型HRSは急速に腎機能が悪化するものをいい、2週間以内でS-Crが倍になるか2.5mg/dl以上に達する。治療しなければaverage median survivalは2週間だ。2型HRSは1型に当てはまらないより緩徐な腎機能の悪化をいう。2型HRSのaverage median survivalは約半年とされる(下図)。
1型HRSは基本、肝移植が第一選択だ。そうしないと死亡率が余りに高いので、MELDスコアにもS-Crが入っているわけだ。しかし肝臓がどっかに落ちているわけではないので、それまでは血管収縮薬とアルブミンの併用が行われ、データがあるのはterlipressinだがmidodrineやnorepinephrineを用いることもある。2型HRSの治療も根治的には肝移植だが、こちらは治療の有効性を示すよいデータがあまりない。この論文は大容量腹水穿刺(+アルブミン補充)、norfloxacin(bacterial translocationを防ぐためだろうか)、血管収縮薬がリストされていた。大容量腹水穿刺を繰り返すのが面倒ならALFApump®といって持続的に腹水を膀胱に流すデバイスを使ってもいいかもしれない(下図;日本にもあるのかな)。
HRSの予防は良いデータがない。アルブミンのルーチンな補充は現在では推奨されていない。Norfloxacinの予防内服は小さなデータがあるようだ。急性アルコール性肝炎におけるHRSの予防でpentoxyfyllineが試されたことがある(がpentoxyfyllineはHRS予防じゃなくてもアルコール性肝炎にどのみち用いられるはず)。V2 selective receptor blocker(vaptan)が予防するかもしれない。データがないから著者も小さなスタディを見つけて書きたい放題だ。
とまあHRSについて書いたが、うえに紹介したNEJMとAJKDのレビューが秀逸なのでそれを参考にしたらいいと思う。教科書的な投稿になってしまって申し訳ない。もっと熱血だったり面白みがあったりしたほうがこちらも書き甲斐があるし読者のみなさんも読み甲斐があるだろうに…。でもまあいいか、たまにはこういう平穏な投稿があっても(朝カンファで「HRSだけで30分語れる」と発言したら「じゃあやって」と言われたので有限実行で書いている)。
[追加]HRS-type AKIに関する国際腹水クラブのレビューが出た(J Hepatol 2015 62 968)。まだ詳しく読んでないが、診断基準からS-Crの値が消えて、そのかわりに国際腹水クラブが提唱するAKIのステージングを採用している。治療の基本原則とコンポーネントはほぼ変わりないようだ。
2015/05/14
Toluene and the kidney
トルエンといえば揮発した蒸気に曝露されて、脂溶性のため脳血管バリアを越えて中枢神経系に達し、さまざまな神経伝達物質受容体に作用して精神神経症状がでる(J Drug Alcohol Res 2014 3 235840)。それから心毒性、それから胎盤を通過して胎児にfetal solvent syndrome(fetal alcohol spectrum disorderのような)を起こすことも知られている。
しかしそれだけではなく、トルエンといえば遠位尿細管アシドーシスと低カリウム血症を起こす。ここで注意すべきは、トルエンは馬尿酸(hippuric acid←hippoって馬じゃなくてカバだと思うけど…ギリシャ語で「馬」らしい;ラテン語はequus)になって、酸を放出すると共に馬尿酸イオン(hippurate)がunmeasured anionになって残るのでAG開大アシドーシスをきたすことと、尿中に大量のunmeasured anionがあるため尿AG(UAG)が当てにならないことだ。
尿AGは[尿Na+] + [尿K+] + [尿unmeasured cation] = [尿Cl-] + [尿unmeasured anion]をひっくり返して[尿Na+] + [尿K+] - [尿Cl-] = [unmeasured anion] - [unmeasured cation]にしたものだから、RTAの場合unmeasured cationであるNH4+が減って尿AGはプラスになる。しかし、トルエン中毒ではunmeasured anionであるhippurateが多いので尿AGが当てにならないこともある。
だから尿浸透圧ギャップを測定する。尿浸透圧ギャップは、実測尿浸透圧から計算浸透圧を引いたもので、計算浸透圧は2 x ([尿Na+] + [尿K+]) + [尿UN] / 2.8 + [尿糖] / 18だ(尿糖はなければ無視してよいが)。しかしちょっと考えれば、こうして得られたギャップはNH4+の浸透圧とそれが引き連れる陰イオン(例えばhippurate)どちらも測っていることが分かる。だからギャップの半分がNH4+だと考えることが出来る(CJASN 2014 9 1132)。
なお、トルエン曝露時の救急対応についてはCDCのATSDR(Agency for toxic substance and disease registry)が詳細なウェブサイトを公開しているので参照されたい。
しかしそれだけではなく、トルエンといえば遠位尿細管アシドーシスと低カリウム血症を起こす。ここで注意すべきは、トルエンは馬尿酸(hippuric acid←hippoって馬じゃなくてカバだと思うけど…ギリシャ語で「馬」らしい;ラテン語はequus)になって、酸を放出すると共に馬尿酸イオン(hippurate)がunmeasured anionになって残るのでAG開大アシドーシスをきたすことと、尿中に大量のunmeasured anionがあるため尿AG(UAG)が当てにならないことだ。
尿AGは[尿Na+] + [尿K+] + [尿unmeasured cation] = [尿Cl-] + [尿unmeasured anion]をひっくり返して[尿Na+] + [尿K+] - [尿Cl-] = [unmeasured anion] - [unmeasured cation]にしたものだから、RTAの場合unmeasured cationであるNH4+が減って尿AGはプラスになる。しかし、トルエン中毒ではunmeasured anionであるhippurateが多いので尿AGが当てにならないこともある。
だから尿浸透圧ギャップを測定する。尿浸透圧ギャップは、実測尿浸透圧から計算浸透圧を引いたもので、計算浸透圧は2 x ([尿Na+] + [尿K+]) + [尿UN] / 2.8 + [尿糖] / 18だ(尿糖はなければ無視してよいが)。しかしちょっと考えれば、こうして得られたギャップはNH4+の浸透圧とそれが引き連れる陰イオン(例えばhippurate)どちらも測っていることが分かる。だからギャップの半分がNH4+だと考えることが出来る(CJASN 2014 9 1132)。
なお、トルエン曝露時の救急対応についてはCDCのATSDR(Agency for toxic substance and disease registry)が詳細なウェブサイトを公開しているので参照されたい。
Sofosbuvir
日本で最も高い薬はeculizumabだと認識していたが、これは夜間発作性ヘモグロビン尿症とatypical HUS(以前に書いた)くらいしか適応がなく使われる頻度は低い。しかし昨日認可されたsofosbuvir(商品名sovaldi)は、一錠6万円で記録を更新?したうえに、疫学的にも頻度のたかいC型肝炎に対する治療薬だ。
私は肝臓内科医ではないのでこの薬がヌクレオチドアナログのprodrugで代謝されてNS5B(HCVのRNA合成に必要な酵素)を阻害することや、HCVのgenotypeに関わらず米国肝臓内科学会・感染症学会のガイドラインで第一選択薬になっていることなどの詳細を把握する必要はない(Wikipediaでもお腹一杯だ)が、注目すべきはこの薬は先進国と発展途上国で価格が大きく違うということだ。
開発したGilead社は、ジェネリック製薬会社が発展途上国91ヶ国でsofosbuvirの後発品製造を許可しており、インドでは1コースの治療(1錠ではなく)300ドルで販売している。だから、これからこういう薬価の二重構造がうまれると、逆医療ツーリズムで、先進国なら何百万円かかる治療を発展途上国に行って安く受ける時代が来るかもしれない。
私は肝臓内科医ではないのでこの薬がヌクレオチドアナログのprodrugで代謝されてNS5B(HCVのRNA合成に必要な酵素)を阻害することや、HCVのgenotypeに関わらず米国肝臓内科学会・感染症学会のガイドラインで第一選択薬になっていることなどの詳細を把握する必要はない(Wikipediaでもお腹一杯だ)が、注目すべきはこの薬は先進国と発展途上国で価格が大きく違うということだ。
開発したGilead社は、ジェネリック製薬会社が発展途上国91ヶ国でsofosbuvirの後発品製造を許可しており、インドでは1コースの治療(1錠ではなく)300ドルで販売している。だから、これからこういう薬価の二重構造がうまれると、逆医療ツーリズムで、先進国なら何百万円かかる治療を発展途上国に行って安く受ける時代が来るかもしれない。
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