2013年4月19日金曜日

Shakespeareと膜性腎症

 膜性腎症には感染症・自己免疫疾患・悪性腫瘍・薬剤などさまざまな要因があるが、syphilisのことは知らなかった。Syphilisは第二病期、発熱や発疹などと共に腎疾患を起こす。それは一過性の蛋白尿から、MCD(minimal change disease)、MN(膜性腎症)、MPGN、RPGNまで様々らしい(JASN 1993 3 1351)。
 Shypilis関連の糸球体腎症では膜性腎症がもっとも多い(膜性腎症のなかでのsyphilis関連は稀だが)。RPRを調べてみたら陽性で、抗生剤を始めたらすぐ寛解したという例も多く、「稀だけど覚えておこう」と各種雑誌にいくつも教育記事(KI 2011 79 924、AJKD 2010 55 386)が載っている。
 という内容を、内科レジデントがこないだRenal Grand Roundで発表してくれた。それで、少し文献を調べてみると、Shakespeareとsyphilis、さらに膜性腎症についての論文に出会った(CID 2005 40 399)。この話、感染症関係者にはすでに常識かもしれないが、私は初めて読んだので書く。
 SyphilisはColombusの航海により旧世界にもたらされ、15世紀末から16世紀初頭にかけ一気に伝播した。ShakespeareはStratfordで18歳のときに26歳の妻Anneと結婚しているが、単身Londonに来るまでには結婚は有名無実化し女性関係は派手だったらしい。さらに彼の文章にはsyphilisの症状を思わせる描写が同時代作家に比べ格段に多く、彼自身がsyphilisに罹っていたのではないかと考えられている。
 Syphilis治療は抗生剤が発見されるまで砒素とかマラリア重感染とか怪しいのが散々試されたが、Shakespeareの時代は水銀と高温療法だった。それで、Shakespeareが晩年持った神経・精神症状は水銀中毒も関係しているといわれる(アルコールもあるが)。さらに、晩年のShakespeareは顔が腫れていたらしく、水銀による膜性腎症を疑う人もいる。