先日はTufts大学から先生が来て『慢性腎疾患と認知機能』という講演をした。認知機能低下は、腎に限らず慢性疾患が進行すれば付随するだろう。だからESRDに認知機能低下が潜在していると聞いても驚くことではない。ある透析施設でMMSEを行ったところ、17点以下が8%、18-23点が22%にみられた(AJKD 1997 30 41)。更年期ホルモン療法スタディの再分析で、GFRは年齢や人種をadjustしても認知低下のindependent risk factorだった(AJKD 2005 45 66)。
どんなメカニズムなのか?詳しくは分からないが、脳血管障害は一つだろう。慢性腎疾患が血管障害をきたす以上、その影響は心血管だけでなく脳血管にも及んでいるはず。あるESRD患者さんを対象にしたcross-sectionalな研究(Neurology 2013 80 471)では、ESRD患者群のexecutive function 低下が見られ(記憶機能は比較的保たれていた)、それにはvascular risk factor(高血圧、糖尿病、心不全など)が強く相関していた。
透析に関係したリスク因子もあるかもしれない。透析中に血行動態の変化によりmyocardial stunningが起こるように、脳も(auto-regulationがあるとはいえ)影響を受けているかもしれない。ESRD患者群には脳MRIに白質異常や脳萎縮が有意に多く見られたというスタディもある(AJKD 2013 61 271、ただしcross-sectionalで透析導入前との比較がない)。うつ病の影響もあろう(AJKD 2010 56 704)。25-OH Vitamin D欠乏の影響(doi: 10.2215/CJN.10651012)も推察されている。