2013年4月29日月曜日

Secondary response

 日々「学ぶのを止めたら縮む」という恩師の言葉を思い出し戒めているが、最近は米国のみならず日本の先生方から学ぶ恵みもあり、ありがたい事だと一層盛り上がっている。それで先日は、代謝性アルカローシスの呼吸性代償について教わり、かつ二次的に自分でも少し調べる機会を得た。

 まず読んだのは健康な被験者に重曹とethacrynic acidを与えて代謝性アルカローシスを起こし、様々な血中HCO3-濃度における呼吸を調べた研究(Chest 1982 81 296)。被験者の一回換気量が下がりHCO3-が1mEq/lあがるごとにpCO2が0.7mmHgあがるプロットデータが示された。

 どうして一回換気量が下がるのか?諸説あるが呼吸生理のレビュー論文によれば延髄の中枢化学受容体が感知する組織[H+]、頚動脈洞の末梢化学受容体が感知する動脈[H+]が関連しているらしい(Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol 2009 296 R1473)。[H+]が低下すれば呼吸ドライブが下がり、[H+]が閾値を越えて下がるとついには化学受容体による呼吸ドライブはなくなる。その閾値は中枢で28nmol/L(pH 7.55)、末梢で34mmol/L(pH 7.46)という。

 末梢化学受容体は酸素分圧も感知しているし、正常pHであれば低酸素は言うまでもなく大変強力な呼吸ドライブだ。しかしこの論文によれば、閾値以下の動脈[H+]は低酸素による呼吸ドライブ刺激をoverrideすると言う。信じがたいが、実際に重度の代謝性アルカローシスに低酸素を合併することはままある(見つけたのはAnn Int Med 1972 77 405、いただいた第一人者によるレビューはAJKD 2011 58 144)。

 それにしても、代謝性アルカローシスが低酸素による呼吸ドライブをoverrideするなんて話を読むと代償のイメージが変わる。もはや「代償」ではなく「アルカローシスの毒が回る」という印象だ。いただいたレビューで「代償」の代わりに「二次性応答(secondary response)」と書いてあったのにも納得した。