内科ICUではIVC径の呼吸性変動がもはやroutineに用いられているが、standardization、validation、limitationについて知らねばならない。Subxyphoid approachで、右房に入る3cm手前(あるいは肝静脈合流部の尾側)で計る。変動はdistensibility index(変動幅/最小径)、collapsibility index(変動幅/最大径)、あるいは変動幅/(最小径と最大径の平均)などで表現する。
RA圧(CVP)とLA圧(PAOP)がfluid responsivenessを見分けるのに役に立たない(Crit Care Med 2007 35 64)のならIVC径も役に立たないように思われる。しかしIVC径の呼吸性変動はdynamic measurementなので、輸液によるcardiac index変動によく相関するらしい(Curr Opin Crit Care 12 249 2006)。どんな呼吸での変動なのか?データが集まっているのは人工呼吸管理、passive breathing(できれば呼吸筋麻痺)、そして時代遅れなほど大きなtidal volume(8-12ml/kg)における変動だ。自発呼吸の人におけるデータは少ない。エキスパートはIVC径が1cm以下ならレスポンダー、2.5cm以上ならノンレスポンダー、中間は分からないと言う(Chest 2012 142 1042)。
他のlimitationには、脈拍が規則的でなければならない、右心不全(や肺高血圧や三尖弁閉鎖不全など)では体液量に関わらずIVCが怒張するかもしれない、胸壁コンプライアンス低下が影響するかもしれない(データによるとあまりしないらしいが)、operator-dependent、などがある。
何だかんだと未だにCVPを用いているICU診療を考えれば、よりvalidateされたデータを臨床応用するのは正しい流れかと思う。しかし、あまり器械に頼らず総合的に判断する腎臓内科医としては「データの読み方を知らずに誤った判断をしないよう教育しないと、鵜呑みにしちゃって大変だ…」という心配もある。
さらに、IVCの次はFloTrac®(SVV、stroke volume variationとScvO2を組み合わせた動的血行動態モニタリング)、流れは止まらない。こちらはご丁寧に、色分けされたグラフで「現在の患者さんはココ、『もっと輸液しようゾーン』です」とかアドバイスしてくれるそうだが、患者さんの脈拍リズムも人工呼吸器セッティングも敗血症(とそれによるcytopathic dysoxia)の有無も考慮しない…やはり読み手の教育が重要だ。