2013年3月29日金曜日

ネフロンの大冒険 2/3

 高張の海水に住む海水魚たちは、放っておけば水が抜けて塩が入ってくる。しかし彼らは、海水を飲んで溶質イオンを排泄することで干物になるのを防いでいる。海水からイオンを抜いて「蒸留水」を手に入れるなんて、現代の海水から淡水を作る技術に引けを取らない生物の大発明だ(Am J Physiol Renal Physiol 2004 286 F811)。

 溶質イオンの排泄だが、Na+とCl-は主に鰓で排泄され、腎臓は残りのCa2+、Mg2+、SO42-などの二価イオンを主に排泄している。これだけなら糸球体など必要ない、尿細管分泌で十分だ。それで、海水魚には糸球体があってもほとんど機能していない(5%以下)。腎が受けた血漿の0.08%しか糸球体ろ過されていないという実験もある。

 0.08%なんて、どうやって調べたか?答えはイヌリンクリアランス/PAHクリアランス。ろ過されるが尿細管で再吸収も分泌もされないイヌリンはGFR、ろ過と分泌によって一度の腎通過でほぼ100%除去されるPAHはRPFに相当するから。この二つ、実はこの文脈で魚について調べられたのが最初なのだ。

 さらに、いくつかの魚では糸球体がない(たとえば、アンコウ)!要らないから、取っ払ってしまったのだ。糸球体がない魚がいることは以前から知られており、糸球体ろ過と尿細管分泌の論争においてHeidenhain(Hermann's Handbuch d. Physiol 1883 5 279)、Johns HopkinsにいたE. K. Marshall(Am J Physiol 1930 94 1)ら所謂"secretist"達を産む元にもなった(異端者扱いされた彼らの業績については、後に述べる)。

 せっかく糸球体を獲得した淡水魚が海に戻って糸球体を捨てている間に、陸上の脊椎動物たちはどうしたのだろう。そもそも淡水魚が水排泄に重宝していた糸球体を、乾燥した陸上でどう活かそうというのか?つづく。