2013/03/15

Conquest of land 1/2

 6年前に腎臓内科の先生とrenin-angiotensin-aldosteroneの話をして、これがあるから生物は陸に上がることが出来たと聴いた。それまで「こいつらのせいで血圧が上がり血管にもダメージが…」とブロックすることばかり考えていた軸が、体液保持という陸上生物にとっての生命線と学び、目からウロコが落ちた(ウロコが落ちて、私も陸上生物の仲間入り?)。

 そして今、この話を深く調べる機会を得た。さかのぼること4億2000万年前、脊椎動物から肉鰭綱が分化した。そして、3億7000万年前頃までには肉鰭綱から進化して、初めての陸上動物である迷歯亜綱(Acanthostega、Elginerpetonら原始両生類)が誕生した。私達が陸上で生きられるのも、肉鰭類が適応したおかげ。

 その肉鰭綱とはどんな動物か?現存するのはなんとシーラカンスとハイギョだ。シーラカンスの太く肉厚な鰭は、肢への前段階と考えられる。同族の絶滅したEusthenopteronには胸鰭内部に骨があり、Tiktaalikには肘関節と手関節まであった。ハイギョは食道腹側の憩室が発達して肺になり、成長につれ鰓呼吸から肺呼吸に移行する。

 しかし肢と肺があるだけでは陸上で生きていけない、体液維持も不可欠だ。その点、肉鰭類はCYP11B2によってaldosteroneを作ることができる(General and Comparative Endocrinology 2007 153 47)!Aldosteroneは他の魚類が作るDOC(11-deoxycorticosterone)に比べてNa+貯留活性が圧倒的に高く、乾燥した陸上への適応を準備したと考えられる。で、このあとどうなったか?続く。

 [2017年5月追加]ハイギョに会ってきた(写真)。ハイギョの夏眠に関連した論文を読んだから。会ってみると、肉鰭類なだけあって鰭を足のようにして這い、ときどき水面で肺呼吸していた。仙台うみの杜水族館にいるが、アフリカハイギョではなくプロトプテルス・アネクテンスという学名で紹介され、解説もない(ホームページには数行あるが)。カメレオンの隣りにいて、みんなに無視されていた。おかげでじっくり観察することができたが、どうしてそういう展示なのか不思議だった。




[2019年5月追加]オーストラリアハイギョに会ってきた(写真)。日本内科学会の開催地から近い、名古屋港水族館にいた。鯉のように見えるかもしれないが、鰭があまり上肢らしくなく、アフリカハイギョより前に進化したと考えられている。「私達の祖先」と展示され、お客さんにも注目されていた。6月に開催の日本腎臓学会も名古屋なので、興味ある方は見学されたい。