私がレクチャの質において最も尊敬している先生が、ひさしぶりにJournal Clubで発表した。現在の診療がいかに問題で、新しい診療がいかに重要で必要かを明確に示し、それを支持するエビデンスとして論文を丁寧に考察していく。途中にTurning Pointという、参加者が無記名で投票するクイズが入り、内容理解がより定着する。この人は、プレゼンのプロだ。
さて彼の話はAKIに対する腎臓超音波検査の必要性について(Arch Int Med 2010 170 1900)だ。どうして彼はこれを取り上げたのか?それは日々の診療で脊髄反射のように超音波検査が行われているのを憂いていたからだ。そしてそれは、全国的な流れに沿うものだという。
2010年、UT GalvestonのDr. Brodyが、エビデンスに基づいて各科ごとに無駄な診療Top Fiveをリストアップしようと提案した(NEJM 2010 362 283)。その提案はABIMとConsumer Reportが共同で始めたChoose Wiselyキャンペーンにつながり、このほど腎臓内科学会を含む内科の9学会が同調した(JAMA 2012 307 1801)。秋にはさらに60数学会が同調するらしい。
腎臓内科のTop Fiveは、①余命が限られた透析患者さんに症状もないのにがん検診をしない、②CKD患者さんで症状のないHgb 10g/dl以上の貧血をエリスロポイエチン製剤で治療しない、③高血圧、心不全、CKD、糖尿病患者さんにNSAIDsを避ける、④CKD stage 3-4の患者さんに腎臓内科医の許可なくPICCラインを入れない、⑤患者、家族、各科医師のあいだで十分な意思決定の話し合いなしに透析を始めない、だ。