2012/07/10

on-line HDF

アメリカにいると、ヨーロッパのものがなんとなく優雅で素晴らしいものに思える。単なるあこがれだが、そんなわけで欧州が取り入れているhemodiafiltration(HDF)も何となく普通の透析に比べて優れているに違いないと思っていた。

 HDFの魅力はUFによってmiddle molecule(分子量1000~10000)を除去できることだ。透析液と別に大量のreplacement fluidが要るが、on-line HDF(on-lineと言ってもインターネットのことではない)は透析液の一部を加工してreplacement fluidを作るので手間が少ない。

 原理はさておき、HDFは普通の透析に比べてどう優れているのだろうか。データによれば透析中の低血圧が少ない、高リン血症がコントロールしやすい、ESA(erythropoiesis stimulating agent、エリスロポイエチンのこと)が少なくて済む、残存腎機能をより維持するなどが知られていた。

 しかし、透析治療にとって一番のゴール、生存率の向上は得られるのか?移植と頻回透析を除き、いままで透析機械を向上して透析患者さんが長生き出来るというデータが得られたことはない。米国のHEMOスタディ(NEJM 2002 347 2010)、欧州のMPOスタディ(JASN 2009 20 654)がhigh KT/Vとhigh-flux filterを試したがだめだった。

 それで、HDFは透析屋に残された数少ない希望の一つであった。Middle moleculeを除去して患者さんの命を救うべくCONTRASTスタディ(contrastといっても造影剤は使わない)が行われ、その結果が最近発表された(JASN 2012 23 967)。結果はいかに?その前にどんなスタディだったのか見てみよう。

 これはオランダ、カナダ、ノルウェイの三か国で約700人の患者さんを対象にon-line HDFとlow-flux HDを比較したスタディだ。なぜlow-flux filterを対照群にしたのかは定かでない。middle moleculeはhigh-fluxでもある程度除けるので、結果を強調するためにlow-fluxと比較したのかもしれない。あるいは、HEMOスタディとMPOスタディでhigh-fluxとlow-fluxで生存率に差がなかったので、どちらでもいいと思ったのかもしれない。

 HDF群では透析時間がやや短く、血液流量が多く、KT/Vが少し高く(1.6 v. 1.4)、リンが少し低かった(4.9 v. 4.8)。Middle moleculeはどうか。beta2 microglobulinの血中濃度は、HDF群で統計学的に有意に低かった(25 v. 35)。しかし基準値が1以下なことを考えると、臨床的にどこまで有意かは謎だ。

 さて、肝腎の生存率はどうか。6年間の追跡で両者に差は見られなかった。それで皆、「HDFは優れているはずなのにどうして?」と残念がっている。残念がったあとに行うのがsub-group analysisだ。なにか一つでもDHFで長生きしたpopulationがないか探すのだ。しかし性別、糖尿病の有無、残存腎機能の有無、どれをとっても差が見られなかった。

 唯一差が見られたのは、convection volumeが上位25%の群だった。それで、HDFを信じる人にとっては「HDFのdoseが少なかったから差が出なかったのか。やっぱりHDFはちゃんとやれば長生きできるんだ!」という希望が残された。現在他にもヨーロッパでいくつかのHDFスタディが進行中なので、それらに希望を託して論文は終わっている。

 middle molecule theoryは美しいが、限界があるのだろう。そもそも透析患者さんの命を救うには心臓を守らなければならない。そして患者さんの心臓を守るには、volumeをコントロールして血圧を下げることと、死のホルモンFGF23を下げるのが先と思う。もしHDFがFGF23でも除けるなら素晴らしいが、残念ながらFGF23の分子量は33000でHDFでも除けない。


 [2013年3月追加]スペインのESHOLスタディ(doi: 10.1681/ASN.2012080875)が出て、ついにall-cause mortalityの有意差が出た(cardiovascular deathには差がなかったが)。middle molecule hypothesisを徹底的に信じない米国の透析文化だが、こういったスタディを受けてon-line HDFが徐々に普及するかもしれない。