Grand Roundで、ドイツからの興味深い論文が紹介された(NDT 2007 21 1248)。急性尿細管壊死による急性腎不全により透析(通常透析あるいは持続透析)を必要とした約420の入院患者の予後を調べたものだ。彼らが試したかったのは「急性尿細管壊死では可逆的な腎機能の回復が見込まれる」という仮説だったので、もともと腎機能の悪い人や他の原因による腎不全は除外されている。
結果、約420人の患者さんのうち47%は入院中に亡くなった。残りの生きて退院できた人達は、一人も透析を必要としていなかった。退院後一年たった調査(98%で追跡することができた)で、退院できた人の33%が亡くなった。一年後の調査で慢性透析導入されていたのはたったの一人だった。なお急性尿細管壊死の原因は60%がischemia、33%が敗血症、7%がnephrotoxinだった。
著者の結論は「もともと腎機能が正常だった人達が急性尿細管壊死を起こすような重い病気にかかっても、生き残ったならば多くの場合に彼らの腎機能は(透析を必要をしない程度に)十分回復する」というものだ。私の結論は「透析が必要なまでの重症な急性尿細管壊死にかかった人達は、透析が必要なくなるまで腎機能が回復しない限り生きて病院を出ることはない」というものだ。
多臓器不全の患者さんに集中治療室で透析をまわしながら、予後に関して「腎機能が廃絶しても透析でなんとか生きられる、ただ他の臓器が助からないことには…」と思っていた。でもこの論文を読んで「腎機能が回復する位の人でないと他の臓器の回復も見込まれず、いくら透析で腎臓だけ肩代わりしてもダメ」という見方に変わった。