他科の先生から質問を受けるのはおもしろい。英語で"think out of the box"とは「ありきたりの考えではない、変わった角度や立場からの考え」という意味だが、そんな感じだ。先日も内科ICUで「透析膜によって血中のbeta-D-glucan濃度があがることがあるというが本当か?」という質問を受けた。beta-D-glucanは真菌細胞壁の成分なので、この血中濃度が高い場合には真菌感染を疑うが、speficicではない検査だ。
調べてみると、なぜか日本の論文ばかり出て来た。一つのabstractを読むと(Nephron 2001 89 15)、話の発端はセルロース由来の材質にはbeta-D-glucanが含まれているということらしい。それでこのグループはセルロース由来の透析膜で透析されている患者さんと非セルロース由来(synthetic polysulfone)の透析膜の患者さんでbeta-D-glucanの濃度を測ったら前者で高く後者で低かった。
相談をうけた症例ではGambro社のPrismaflexというCVVHDF機械を使っていたが、調べてみると膜の材質はacrylonitrile and sodium methallyl sulfonate copolymerとのことだった。見るからに非セルロース系だ。というわけで、beta-D-glucanは透析膜のせいではなく、他の原因、わけても真菌感染を考えなければならない。こういう話をしていると、自分が医者というか生体工学の人みたいに思える。