2012/03/04

Transplant ID 2/2 後編

BKウイルスは、90%以上の人達が小さい時に感染するが、その後は(どういうわけか)腎臓でアリエッティのようにこっそり暮している。宿主の体調が悪い時などにひそかに血中や尿中にでてくることもあるが、asymptomatic sheddingとよばれ問題を起こすことはまずない。
 しかし免疫抑制が強すぎると、BK nephropathyといって腎臓が冒され、病理学的にはmarked nuclear enlargement in tubulesやinflammatory infiltratesを起こす。こうなると、70%の場合に移植腎の機能が失われる。
 もっとも個人差があるのでこの薬をどれだけ飲んだらダメとかは言えないのだが、高リスクなのは高齢の男性だ。治療は①に免疫抑制を弱める、②にcidofovir(しかしこの薬には腎毒性がある)、③にleflunomide、④にfluoroquinolone、それにIVIGを使うこともある。
 移植患者の汎血球減少は、臨床上とてもよく遭遇するが、ウイルス(CMV、HHV-6、parvovirus B19、West Nile Virus、etc)と薬剤(MMF、ST合剤、gancyclovir、sirolimus、interferon、etc)の他にもPTLD、fungal infection(histoplasmosis)などを考えなければならない。
 Histoplasmosisは、なぜか頚部痛や髄膜症状を呈することが多く、しばしば腰椎穿刺でCSF analysisをしなければならないらしい。鏡検ではnarrow-based budding yeast(coccidiomycosisがbroad-basedなのと対照的)。治療後、経験的にいわば"fungal lysis syndrome"とでも言うべきサイトカイン血症をきたすそうだ。