Gastric bypass手術をすれば体重が減るだけでなく糖尿病や高血圧の薬がいらなくなる。腎移植をすれば透析が要らなくなるだけでなく、多くの場合に高血圧の薬が減り他の薬も減る。このように手術のほうが内科医の治療なんぞより断然に効果的ということはあるが、ここにまた別の例がある。
これは正確には手術ではないが、renal sympathetic denervationという治療だ。Ardianという会社(Medtronicsに手付金8億ドル+commercial milestone paymentsで買収されたが)の開発したSimplicityというデバイスは、カテーテルで腎動脈にアプローチしてradiofrequency ablationにより腎にむかう交感神経を遮断することができる。これによりレニン産生の低下、尿細管での体液貯留の改善、血管収縮をおさえるなどの機序で血圧が低下するという。
実際に欧米、豪州(とNZ)でSYMPLICITY HTN2とよばれる試験が行われ(Lancet 2010 376 1903)、3つの降圧剤(利尿剤を含まなくてもよい)を処方通り飲んでも血圧が下がらない人達にこの治療をしたところが6か月後に収縮期血圧がmeanで32mmHgさがった。衝撃的な結果だ。
もっともGFRが45ml/min以下の患者さんは除外されているが。副作用として心配された腎機能悪化や腎血管狭窄もみられなかった(1例で腎に関係ない動脈硬化病変の悪化がみられただけ)。2年間フォローアップしたSYMPLICITY HTN1スタディ(Hypertension 2011 57 911)でも、フォローアップの率は少ないながら血圧低下は持続していた。神経が腎臓にまた伸びてくるのではという理論的な懸念は、現実には起きていないようだ。
米国ではまだ認可されていないが、さっそくSYMPLICITY HTN3スタディが組まれており来年三月にも完了する予定だという。その何年後かに日本でも認可されているかもしれない。この研究グループは成果に自信をもっていて「高血圧はcureできる」と豪語している。そんな日が本当にくるのだろうか。