2012/03/04

Transplant ID 2/2 前編

移植後感染症に関するレクチャ・後編があり、CMV、BKウイルス、そして汎血球減少症について習った。量が多いからまずCMVについて記す。CMVはより強い免疫抑制を要する膵腎・心・肺移植などで頻度が高いが、腎移植後の患者にも起こる。donorからもらう場合、recipientの既感染が再活性化する場合があり、donorとrecipientのstatusによってimmunoprophylaxisの種類と期間が異なる。
 より問題になるのはdonor statusで、donorがCMV(+)ならrecipientが陽性であれ陰性であれハイリスクと考えられ、うちの施設ではvalganciclovirを三か月にacyclovir 800mg QIDを三か月投与する。Donor(-)でRecipient(+)ならacyclovir 800mg QIDを三か月投与する。Donor(-)/Recipient(-)が低リスク群で、HSVのprophylaxisにacyclovir 200mg BIDを三か月投与する。
 さてCMVの感染症にも程度があって(英語ではspectrumというが)、症状のないウイルス血症で終わることもあれば、各臓器を障害したり、disseminated infectionをきたすこともある。肝移植患者には肝障害を、肺移植患者には肺臓炎を起こすなど、immuno-milieu(CMVが好む免疫学的な環境)があるようだ。だが症状として最もおおいのは胃腸炎、下痢である。
 さらにCMVは、このような直接の障害を起こすだけでなく、immunomodulation、すなわち免疫系を狂わせて間接的に他のウイルスに掛かりやすくしたり、移植臓器の機能不全(rejection)を起こしたり、あるいはPTLDに掛かりやすくしたりする(CMV感染に掛かるとPTLDのリスクが7倍上がるという)。
 治療は、①に免疫抑制を少なくする、②に抗ウイルス剤(経口valganciclovirは、 L-valyl ester of ganciclovirでbioavailabilityが高いので、IV gancyclovirとほぼ同等に効く)、③にIVIG。抗ウイルス剤を2-3週間投与して、maintenance therapyに切り替えて、そこからどうするかは一定した治療ガイドラインがない。大体の場合、血中のCMV PCRが陰転化して1-2か月でやめるらしい。