②はもっとも免疫抑制が掛かる時期なので、opportunisticな感染、それに①のようなドナー側にあった感染やレシピエントに元々あった感染のrelapseが問題になる。具体的にはCMV、EBV、HSV、肝炎ウイルス、HHV6-8、JCウイルス、BKウイルス、ヒストプラズマ、coccidiomycosis、TB、pneumocystis、トキソ、アスペルギルスなどだ。③は、安定期と言えるが、患者さんの全身状態が悪かったり、拒絶反応に伴う治療などで重度の免疫抑制を要したりすると②のような問題がでてくる。
さて、免疫抑制患者は上述のような変わった病原体にしか掛からないのかと言うとそんなことはない。免疫抑制患者に最も多い肺炎はcommunity-acquired pneumoniaである。そしてしばしば重症で治りにくい。肺炎球菌について調べた人がトロントにいて(Am J Transplant 2007 7 1209)、invasive pneumococcal diseaseのincidenceは移植患者で146/100,000 person/yr、一般の人々の間では11.5/100,000 person/yrだからとても多い。
免疫抑制患者が感染症にかかりやすいのは無論だが、すべての症状が感染症によると決めつけてはいけない。感染性の肺炎とおもったらsirolimusによるinterstitial pneumonitisだった、ということもある。下痢にしても、感染(C diff、CMV、bacterial、cryptosporidium、viral gastroenteritis、UTIなど)だけでなく、薬剤によるもの(MMF、tacrolimus、sirolimus、antibiotics)や他の原因(PTLD、GVHD、IBD、etc)を考えねばならない。
なお尿路感染症が下痢を起こすのはとくに腎移植患者にみられ、これは移植腎が結腸に近いため炎症が波及しやすいからと考えられている。Cryptosporidiumは検査を何度も繰り返さないと見つからない場合があり、治療にはnitazoxanideを用いるがしばしば難治性で苦労するらしい。