2011/08/19

XO inhibitor

 慢性腎不全の患者さんは心血管系疾患とそれによる死亡率が高い(AJKD 32, S112-119, 1998)。それで、いかに慢性腎不全の患者さんを心血管疾患から守り長生きさせるかが腎臓内科医の最大の課題の一つだ。この課題を解くために、①どの患者さんがハイリスクなのかを見つける、②どうしたらそのリスクを減らすことができるか考える、という二つの問いを立てて多くの人達が研究している。

 リスク因子の一つに、endothelial dysfunctionというのがある。血管内皮細胞には防御機構が備わっていて、狭窄や閉塞などで虚血に陥った場合に代償的に拡張しようとする。しかし腎不全の患者ではその働きが弱くなる。endothelial dysfunctionを計るひとつの方法がFMD(flow-mediated dilatation)だが、FMDが弱い腎不全患者さんは、そうでない患者さんに比べて心血管疾患で死亡する確率がとても高い。

 別のリスク因子は高尿酸血症だ。尿酸は血管肥大、高血圧、RAA(renin-angiotensin-aldosterone、私の好きな生物を陸上で生活できるようにしたシステム)の亢進などにより心血管疾患リスクをあげることが知られている。また移植患者では、CNI(calcineurin inhibitor、すなわちtacrolimusとcyclosporineのこと)により尿酸値が上がるらしい。

 では、尿酸値を下げると心血管リスクは減るの?という話になる。それで調べてみると、xantine oxydase阻害剤(allopurinol)はリスクを下げるが、尿酸排泄促進剤(probenecid)はリスクを下げないことがわかった。さらにallopurinolは、血中の尿酸濃度に関わらず腎不全患者の心疾患を予防するかもしれないという論文がでた(JASN 22, 1382-1389, 2011)。

 しかしNephrology Grand Roundで聞いた話では、LV mass indexのさがり幅が1g/m2と少なく、フォローアップ期間も9か月と短いので、これだけでは何とも言えないようだ。今度読んでみようと思う。Allopurinolと言えば腎不全患者にはdose reductionが必要とか、Acute interstitial nephritisを起こすとか、腎臓内科医には使いにくい薬だが、思わぬメリットがあるようで見直さなければならない。