移植サービスの特徴の一つは、巨大なチーム医療ということだ。病棟では移植コーディネータ(看護師)、移植外科と毎日話し合う。外来では精神科、感染症科、倫理の専門家、ファイナンシャルアドバイザー、薬剤師、その他さまざまな職種の人が患者さんを診る。いざ移植に当たってはレシピエントの搬送(時には病院のprivate jetで)、ドナーの搬送、これらをコーディネートする沢山の人達がいる。
この手厚い医療に患者・家族の満足度も高い。これだけ充実しても、患者さんが透析に行かなくなることで浮く医療費を考えれば莫大なお釣りがくる。移植は、手術前後に医療資源が最も投入され、そのあとは免疫抑制剤代くらいしかかからない相対的に安い医療だ。毎日カフェテリアで昼ごはんを食べることを考えれば、贅沢な材料でお弁当を作った方が安いのと同じ。
そればかりではない。いま仮に55歳の慢性腎不全の患者さんが、移植か透析か選ぶとしよう。移植を選んだ場合、この人は透析を選んだ場合に比べて少なくとも2倍は長生きできることが分かっている。透析を週6日すれば移植並みに生きられるかもしれないという研究はなされているが、誰が週6日透析に来るだろうか、そして誰がただでさえ高額な透析医療費を増やすことに合意するだろうか。
透析患者をいかに長生きさせるかというのは世界中の腎臓内科が知恵を絞って考えているテーマだが、まだまだだ。ただkT/V(尿素の除去効率)を上げただけでは差が出ないことが分かっている(HEMO study, 2002)。そんなことではGFRは8ml/minから高々12ml/minにしかならない。尿素排泄の他にも腎臓は様々な働きをしている。だから、移植をする人は「腎臓の代わりは腎臓に限る」と言っているわけだ。