2011/08/16

Anti-HLA antibody

 ドナーがなかなか見つからない患者さんは、desensitizationをしてでもHLA不適合移植をしたほうが、移植せずに透析をして待ち続けるより長生きできるという論文がJournal clubで紹介された(NEJM 365, 318-26, 2011)。

 Donor-specific anti-HLA antibodyは、妊娠や輸血、以前の移植などで作られることが多いが、そうでなくても敏感な免疫の人は元々持っている場合もある。ウイルス感染なども免疫反応を惹起する過程でこれらの抗体を作ることがある。

 この抗体がターゲットとなる抗原をもった臓器をあげたら、免疫の思う壺というか、飛んで火に入る夏の虫というか、移植臓器はdonor-specific anti-HLA antibodyの餌食になってしまう。だからドナーの免疫と移植臓器がマッチすることをあらかじめ確かめる必要がある。

 CDC(complement-dependent cytotoxicity assay)はドナーの血清とレシピエントのリンパ球を混ぜて反応するかをみる試験だ。補体とanti-human globulinをつかって反応を起こりやすくしている。さらに感度が高いのがFCXM(flow-cytometry cross-match)。

 さらに感度が高いのはbead assayで、これはレシピエントとの反応がどうこうというより、単に抗体を検出している。この試験は感度が高い半面、false positiveも高い。言い換えると、非常に抗体価の低いものまで拾ってくるが、これらの抗体がどれだけ移植後悪さをするかは分からない。

 移植にあたってはクロスマッチで反応がおこらない相手を探すのが第一だが、ドナーの30%は残念ながらdonor-specific anti-HLA antibotyを持っており、彼らに適合する臓器を見つけてくることは容易ではない。そこで、ただ待ちぼうけるのではなく、ドナーをde-sensitizeしてはどうかと言う話になる。

 De-sensitizationには大きく二つの方法があり、ひとつは高用量のIVIG、もうひとつは低用量のIVIGと血漿交換を組み合わせたものだ。これを行ってからHLA不適合移植した群は、適合移植の相手が見つかるまで待った群(どちらも移植後は免疫抑制を掛けるが)、相手が見つからずに待ち続けた群に比べて長生きした。

 しかし、どの群もloss of follow upが多く、8年間のフォローアップで得たKaplan-Meier曲線は美しく不適合輸血群の有意な長期生存を示しているものの、説得する真のパワー(計算上の統計学的なパワーでなく)は低い、と先輩フェローがこれをビシッと指摘しており、なるほどなと尊敬した。