2011/08/12

目からウロコ(ステロイドで血圧があがる仕組み)

 ステロイド内服で血圧が上がるのはなぜか。私はずっと「ステロイドには程度に差はあれども鉱質コルチコイド作用があって体液保持に働くからだ」と思ってきたが、そうではない。pure glucocorticoidであっても血圧は上がるし、ステロイドによる高血圧患者にaldosterone inhibitorを使用しても血圧は下がらない。そこで、「ステロイドがもっと直接に血圧をあげる仕組みがあるんじゃないか?」という話になる。

 それを研究している人達がいて、彼らはvascular endothelial glucocorticoid receptorが関係しているらしいことを突き止めた(J of Hypertension 29, 1347-1356, 2011)。この受容体をノックアウトしたマウスは、大量のdexamethasoneを投与しても血圧が上がらない。しかしphenylephrineには反応する。つまりステロイドはこの受容体を介する、しかしα受容体を介しない機構で血圧を上昇させることが示唆される。

 長年無批判に信じて来たことが違うかもしれないと分かって、ビックリしたが刺激的だった。ステロイド受容体といえば細胞質にあってステロイドと結合すると核内に移動して様々な転写因子のスイッチを入れると記憶している。血管内皮細胞のステロイド受容体は、他の受容体と比べて何か特別な働きがあるのだろうか。最終的には血管収縮に働くわけで、その途中のmissing linksをどう埋めるのだろう。興味深い論文だった。