以前に酸塩基平衡に関連して「愛する者の寝息がどうこう」と書いたが、愛と酸塩基平衡の新たなつながりを知った。といってもゲーテの『親和力(Elective affinities)』(1809年)のような、H+とA-が惹かれあってどうこうという話ではない。母の愛の話である。
妊娠中はprogesteroneの働きで下部肋骨靱帯が弛緩して胸郭が開き横隔膜が挙上し、tidal volumeは増加する。これによりお母さんのpCO2は赤ちゃんのpCO2よりも下がり、pCO2勾配に従って(産まれてオギャーと泣くまで肺が閉じている)赤ちゃんのCO2はお母さんの血中に運び去られ、お母さんの肺から除かれる。
腎臓は、呼吸性アルカローシスを代償することで母の愛をサポートしている。それでHCO3-が腎に捨てられるので尿pHが高くなり、血液中のHCO3-は18-21mEq/lに下がる(Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol 2008 22 801)。これらは正常な所見なので、覚えておこう。