2013/06/08

時の流れと共に

 利尿剤の歴史について調べながら、あらためて高血圧治療の変遷について考えた。利尿剤の歴史は古く、西洋では塩化水銀が永らく浮腫(垂れ下がるのでdropsyと呼ばれていた)に用いられてきた(Modern Drug Discovery 2003 Feb 19)。しかし高血圧は、本態性と呼ばれるようにそれ自体治療せずともよいと考えられていた。それが、20世紀にはいり徐々に血圧と心血管疾患の関係が分かり始め、塩化水銀は副作用で使いにくい薬でもあり、1950年代に新しい利尿剤が開発された。

 最初に作られたのは抗菌剤sulfanamideを元に作られたacetazolamideなどのCA inhibitors。次に作られたのがthiazides(まずchlorthalidoneができて、加工してHCTZが作られた)。その後もさまざまな降圧剤が開発され、それまで降圧は臓器潅流を悪化させると考えられていた高血圧治療はこの100年の間に一変した。

 それでも脳だけは急激に降圧すべきでないと考えられて来たが、先日NEJMに脳出血のselected  populationに対する超急性期のaggressiveな降圧治療(1時間後のゴール140mmHg以下)がガイドライン(180mmHg以下時のみ降圧)に比べてmortalityに差がない、modbidityスコアは優れているというINTERACT2スタディが出た(DOI: 10.1056/NEJMoa1214609、INTERACT1はLancet Neurology 2008 7 391)。

 いまから60年も経ったら、今の最新治療はoutdatedになり、それだけならまだしも間違っていると証明されるかもしれない。大事なのは日々変わっていく治療についていく努力と、その時々にベストの知識と経験でベストと思う治療をしてそれが先につながっていくと信じることと思う。それから、どれだけ時代が変わっても変わらない医療の本質を離さないこと。

 [2016年6月追加]多国籍多施設ATACH-2スタディ(DOI:10.1056/NEJMoa1603460)の結果がでて、両群ともかなりアグレッシブに降圧している(24時間以内に120mmHg v. 140mmHg)が死亡などのprimary outcomeに有意差なし(数字上はインテンシブ群のほうが悪い)、7日目以内の腎障害(カルテ上からMedDRA;ICU国際医薬用語集の用語をピックアップしたもので、詳しいことはわからない)はインテンシブ群で有意に悪かった。