Josephineとは女性の名前(男性はJoseph)で、これをラテン系にするとJosefinaだ。米国のミネラルウォーターブランドAQUAFINA®は、aqua(水)にfinaを付けて親しみやすくしているわけだが、FENa(Fractional Excretion of Na)を「フィーナ」と呼ぶのも、何でもかんでもニックネームにしたがる米国英語らしい。
さてフィーナには悪いが、腎臓内科を勉強するほどその限界が目に付いて、私はこれを一応計算するがあまり依存しなくなった。この指数は乏尿性腎不全のごく小規模なスタディでしかvalidateされておらず、多くの場合misleadingなのだ(CJASN 2012 7 167)。今日はFENaにまつわるいくつかの点を指摘したい。
一つは、いま元気にしているeuvolemicなあなたのFENa。あなたの腎臓はあなたが一日に摂取する9gの塩のほぼ全てを排泄する(これを利用して心不全における食塩摂取量とmortalityのJ-shapeな相関を示したスタディについて前に書いた)。9gの塩には154mEqのNa+が入っている(生理食塩水1Lと同じ)。あなたの2L/dの尿Na濃度は77mEq/L。あなたの血液Na濃度は、ADHのおかげで140mEq/L。
あなたのUcr/Pcrはいくら?Ucr/Pcrは水再吸収の指数だ。ろ過されたクレアチニンは再吸収されない(何なら尿細管から少し排泄される)のに、水はほぼ99%再吸収される。だから、健康な腎臓ではUcr/Pcrは1/(1-0.99)、まあ100といっていい。だから、健康なあなたのFENaは77/140/100、0.55%。でもあなたは腎前性腎不全じゃない。
もう一つは、たとえ尿細管の機能が落ちてもFENaは多くの場合に腎前性を示すこと。たとえば虚血に弱い近位尿細管機能が落ちて水再吸収指数Ucr/Pcrが40まで下がったとしよう。それでも(血液Na濃度が140mEq/Lとして)尿Na濃度が112mEq/Lを超えないとFENaは2%に達しない。
実際に、尿Na濃度が60mEq/lあり、尿沈査で顆粒円柱が出ているのにどういうわけかFENaが腎前性を示す、というようなことは良くある。それなのにFENaを信じると、尿細管機能が落ちているのに「pre-renal、pre-renal」と輸液してvolume overloadになってしまうかもしれない。何事も金科玉条にせず限界を知って活用し、総合的に判断しろということか。