Renal Grand Roundで後輩フェローが、スリルとサスペンスのある素晴らしいstory tellingで聴衆を惹きつけ、知られていないが知っておくべき内容を情熱と自信をもって話した。メッセージは「耳朶、鼻先などの壊死・出血斑、腎炎、無顆粒球症、それに広汎な自己抗体陽性(なかでもMPO-ANCA・PR3-ANCAの強陽性)を見たらtainted-cocaine induced renal vasculitisを疑え」というもの。
Cocaineは様々な腎疾患を合併するが、ここで問題になるのはbulking agentとして混ぜられるlevamisoleだ。Levamisoleは駆虫薬として競馬界で用いられていたが、代謝産物がaminorex様の向精神作用を持つため使用が禁止された。しかしlevamisoleは白く、cocaineが純正かを試す試験(俗に言うbleach test)をパスするため、現在米国で手に入るcocaineの70%以上にlevamisoleが入っているとされる。
Levamisoleはimmuno-modulatorで、Mayo Clinicのレビュー(Mayo Clin Proc 2012 87 581)によればANA、ANCA、dsDNA、lupus anticoagulant、anti-human elastase antibodyなど広汎に自己抗体を惹起する。もっとも、このように広汎な自己抗体陽性パターンはlevamisoleだけでなく、その他のdrug-induced vasculitis(hydralazineなど)でも見られるらしい。MGHの報告(CJASN 2011 6 2799)ではMPO-ANCA、PR3-ANCAが強陽性だった。
Levamisoleをどのように検出するか?半減期が短い(6時間、cocaineは48-72時間)ので通常の尿検査では見逃すことがある。Mayo Clinicはgas chromatography/mass spectrometryを用いているらしいが。Drugの入っていた袋やパイプ、sniffingに用いられた紙幣などを検査に出すのも方法の一つらしい。Cocaineの最大消費国(500万人が使用しているというデータも…)米国ならではの話だが、drug-induced vasculitisの一例として覚えておきたい。