2011/09/04

recover

 頻出の英単語で意味を知っていると思っていても、使われる文脈を間違えていることがある。たとえばrecoveryと言う言葉だ。こないだ移植腎の機能が悪くなり透析にもどった患者さんを見た。こういうとき、免疫抑制剤は不要になるので一つ一つ減らしていく。このとき、たいていはTacrolimusを先に減らす。それはTacrolimusがafferent arterioleを収縮させることでGFRを下げるので、これを止めれば患者さんにいくらかのGFRを戻すことができるかもしれないからだ。

 さて、それを学んで私はこの患者さんのカルテに「Tacrolimusを止めよう、それは止めることで患者さんの腎機能が回復するかもしれないからだ」と書いた。すると指導医の先生が「TacrolimusによるGFRの低下は病気ではなく、純粋に血行動態の問題なので、薬をやめてGFRが上がるのはrecoverとは言わない」という。またこの話を看護師さんにした時も、「あなたは患者さんの腎機能が戻って来ると思っているの?」といぶかしがられた。

 違いがよくわからないので辞書を引いてみると、recoverとは"to bring up to a normal position or condition"とある。看護師さんの発言は、この辞書の定義で説明できそうだ。recoverというと腎機能が元に戻り透析がいらなくなるという風に聞こえるのだろう。指導医の先生が言いたかったのは、recoverというのは何らかのダメージから回復するということで、たとえば薬剤性腎障害が薬剤をやめて良くなるような場合に使うと言いたかったのだろう。